【元小学校教師】3日間で25メートル泳げるようになる教え方!スイミングスクールに通わなくても上達する方法とは?

教え方のコツ

水泳。小学生の子どもをもつ親が、最も通わせる習い事の一つでしょう。

だからこそ、周りを見て悩んでしまう保護者の方もいると思います。「周りに通っている子が多いけれど、うちも通わせるべき?」「何歳までに泳げないといけないの?」など、様々疑問が浮かんでくるでしょう。

小学校の授業では、3年生から本格的な泳ぐ指導が始まります。1~2年生は水に慣れる段階。5年生までに、25メートルを泳ぐ力を身に付けているのが理想的といった感じです。

しかし、学校の授業だけで、どこまで泳げるようになるのでしょうか。

筆者は元小学校教師です。10年間教員をしていたので、300人以上に水泳指導をした経験があります。

2016年に3年生を担任しました。5日間の水泳指導(60分×5=5時間)を経過して、25mの達成者は以下のように変化しました。

25m達成者:9人/31人(29%) → 27人/31人(87%) +58

具体的な記録(学級平均)の変化は、以下のようになりました。

学級平均:17.7m → 400.9m (+382.2m)

5日間で、25m達成者は18人増え、学級平均は383.2m伸びました。

なぜこれだけの短期間に結果が出るのか。それは「呼吸」「手の動き」「キック」の3つの動作を一つずつ教えるからです。なかなか上手くいかない指導法は、3つのことを同時に教えていることが多いです。

この記事では、3日間あれば25mを泳ぐことができる指導法と、そのポイントを伝えていきます。

スイミングスクールに通わせるかどうかは、この記事に書いてあることを試してみてからでも、遅くないのではと思います。

3日間で25m泳げるようになる指導法

結論から言うと、3日間で25mを達成するプログラムは、「平泳ぎ」を中心とします。「平泳ぎ」を普通とは違う視点から、6つのスモールステップに分けて教えていくのです。

  1. だるま浮き
  2. 連続だるま浮き
  3. 手を前に出した連続だるま浮き
  4. クラゲ足平泳ぎ
  5. ドルフィンキックのクラゲ足平泳ぎ
  6. 平泳ぎ

一つ一つのステップには、負荷がほとんどありません。そして、体の構造上、勝手に次のステップにつながっていきます。自然な流れでスモールステップが組まれているのです。

筆者は全国津々浦々の研修・セミナーに学びに出かけ、300を越える指導法を学んできました。その中で、最も結果を出している方法を試しています。つまり、誰が教えても一定の結果を得ることができる指導法です。

ここからは、25mを泳ぐことができない理由や、各ステップの教え方を詳しく解説していきます。

なぜ泳げるようにならないの?

水泳で最も難しい指導ポイントは「呼吸」です。クロールの場合、「キック(バタ足)」から教えます。その次に「手の動き」、そして「呼吸(息継ぎ)」です。

「呼吸」が最も難しいはずなのに、「キック」や「手の動き」と組み合わせて、同時にやらせてしまうのです。

異なる運動を同時に行うことを「協応動作」と言います。

例えば、なわとび。これは、「なわを回す」運動と「ジャンプ」という2つの運動を組み合わせた協応動作です。そして、これが3つになると極端にハードルが上がります。

ピアノが分かりやすいでしょう。ピアノは「右手」と「左手」、「足」の動きが全て違います。

異なる3つの動きを協応させるには、かなりの時間とトレーニングを必要とすることが分かってもらえたのではないでしょうか。そして、水泳も「呼吸」「手の動き」「キック」の3つを同時に指導するから、難しくなってしまうのです。

では、どうしたらよいのか。それは「呼吸」だけに指導を絞るのです。そして、それをスモールステップで平泳ぎに徐々に進化させていきます。

泳げる基準は「だるま浮き」が10秒できるか

ファーストステップは「だるま浮き」です。これは1~2年生でも取り組む動きです。

「だるま浮き」とは、体操座りのように、膝を両手で抱える体制で浮かんでくる動きのことを言います。水中に潜り、両膝を抱え、ゆっくり浮かんでくるのです。

水面に到達したときには、背中が水面上に見え、目線はプールの床を見ている状態です。そして、鼻からは息を吐き出し続けているのです。

鼻から息を出し続けていくことを「ボビング」と言います。この「ボビング」が極めて重要です。

「だるま浮き」が10秒できているのならば、「平泳ぎ」にチャレンジする下準備は整っていると言えるでしょう。

平泳ぎができる基準は「連続だるま浮き」が3分間できるか

さて、ここからが、本格的な「平泳ぎ」へのスモールステップとなります。「だるま浮き10秒」ができるのならば、「連続だるま浮き」という次のフェーズに移ります。この「連続だるま浮き」で身に着けさせたいのが「呼吸」です。

「連続だるま浮き」は「だるま浮き」を何度も繰り返す動作のことを言います。

「だるま浮き」をすると、水面にプカーと浮かんできます。その時に、背中が水面から見えており、目線はプールの床を見ている状態でした。水面に浮上したら、一旦膝を抱えている両手をほどいて、水を真下にかき、顔を水面に出して「呼吸」をします。

その後、またゆっくり水面下の沈むので、両膝を抱え「だるま浮き」の姿勢になります。そのままプカーと水面に浮上したら、また、水を下にかいて、「パッ」と「呼吸」をするのです。

この「連続だるま浮き」は、手で前に推進する動きも、「キック」もありません。

ただ「呼吸」一点にのみ、ポイントを絞っています。そして、これが3分間ずっとできるのならば、既に「平泳ぎ」ができる実力を備えています。

筆者が指導をしてきた300人を超える子どもの中で、この「連続だるま浮き3分間」をクリアしたのに、25m泳げなかったという人は、誰一人としていませんでした。それだけ、「呼吸」ができている状態を先に作ることが重要なのです。

3分間はかなり長い時間ですが、1分間できるのならば、3分間ずっと続けることができると判断できる場合もあります。

手を前に伸ばした「連続だるま浮き」

「連続だるま浮き」が3分間できるようになったら、次のステップに進化します。それが、「手を前に伸ばした連続だるま浮き」です。

これは、「だるま浮き」で両膝を抱えていた手を、前に伸ばすだけです。たったこれだけで、25mを泳ぎ切ることができます。

手を前に伸ばした状態で、「連続だるま浮き」を行おうとすると、どうなるのでしょうか。顔を水面上に出すために、水を下に押すという動作の方向が変わります。

今までは、「真下」に水を押していたのが、「斜めに」水を押すようになるのです。読者の方も、その場でやってみると分かると思います。これが、前に進む推進力となります。

既に「連続だるま浮き」で「呼吸」はマスターしているのですから、ちょっとの推進力を加えてあげれば永遠に泳ぐことができます。これはやってみると分かるのですが、この泳法は、疲れるということがほとんどありません。

当時の筆者の学級では、この時点で、6人の子どもが初めて25mを泳ぎ切りました。進むスピードはゆっくりですが、確実に進んでいくのです。他の子どもたちも「多分自分もいける。」と感じたのか、「次のプールはいつですか?」と毎日のように聞いてくるようになりました。

クラゲ足平泳ぎ

「手を伸ばした連続だるま浮き」の次は「クラゲ足平泳ぎ」です。これは「だるま浮き」で体に寄せていた足を、伸ばすだけです。

つまり「伏し浮き」の状態です。その状態で、前のステップのように水を下に押して「呼吸」をしていくのです。

正直、これは前のステップと難易度が全くと言っていいほど変わりません。ですから、子どもたちは、何の抵抗もなく、この動きをマスターすることができます。

この姿勢に慣れてきたら、一つの変化を加えます。これで、泳ぐ距離が激変します。それは、「手を横にかく」という「平泳ぎ」に近い動作です。

子どもたちには、「手は、真下におろした方が進むか、横に広げる方が進むか、どちらですか。」と投げかけます。そして、両方試させて、体験させます。

すると、「横に広げた方が進む。」という意見に一致します。「では、横に広げる方法で試しましょう。」と、その方法で泳力測定にチャレンジさせるのです。

「手を横に広げる」だけで、推進力が一気に上がります。これが水泳指導3日目です。この日に、25mを始めて泳ぎ切った子どもが、さらに5人増えました。学級平均は196.9mに上昇しています。

子どもたちは、全く苦しくないのに、次々と記録が伸びていくことが面白くて仕方がない様子でした。「次は400mに挑戦します!」と元気の良い声が聞こえてきたことを覚えています。

「ドルフィンキック」を加えたクラゲ足平泳ぎ

「呼吸」「手の動き」を教えた次は、いよいよ「キック」です。といっても、平泳ぎのようなカエル足の「キック」ではありません。もっとシンプルな「ドルフィンキック」です。

「クラゲ足平泳ぎ」を習得している段階で、実は「キック」のフェーズが既にスタートしています。

「クラゲ足平泳ぎ」で手を横に広げ、「呼吸」をすると、その時に自然に膝が曲がります。後はその膝を曲がりを大きくすればよいだけです。

「手で水をかくと自然に足が動きます。そのタイミングで、かかとをおしりに近づけてから、水をやわらかく蹴りましょう。」と声を掛けるだけです。何も難しくありません。すると、前回よりもう一歩、推進力を得ることができます。

「ドルフィンキック」の指導を経て水泳指導4日目が終了しました。泳力測定の結果、新たに25m達成者は3人増加。学級平均は353.8mにまで変容しました。

初回測定では、わずか10mしか泳ぐことができなかった子どもが、600mを泳ぎ切るのです。ここまで来たら、後は仕上げをするだけです。

カエル足の平泳ぎ

最終ステップは、「平泳ぎ」を完成させることです。つまり、「ドルフィンキック」を「カエル足」に進化させます。この時点で、既に十分泳ぐ力を付けているので、おまけのようなものです。

ステップも簡単です。陸で足の形のみを教えます。おしりと両手を地面に着け、足だけ動かせばよいのです。それができたら、後は水中で試すだけ。「今までドルフィンキックをしていたタイミングでカエル足をしましょう。」と声を掛けるだけです。

最終的に学級平均は400.9mとなりましたが、これは、水泳指導が60分しかないため、時間で区切った結果でした。「俺1000mまで泳げたのに、時間が足りなかった。」という子どもが何人もいました。

全く苦しさを感じない分、ずっと泳ぐことができてしまうのでしょう。そのような意味では、この「連続だるま浮き」から始める「平泳ぎ」の指導法は、命を守る泳法として最適だと言えるでしょう。

超重要アイテム「ヘルパー」

ここで、忘れずに伝えなければならないことがあります。それは「ヘルパー」の存在です。実は、多くの子どもたちは「だるま浮き」の指導時から、「ドルフィンキックを加えてクラゲ足平泳ぎ」までの間、ヘルパーを付けて泳いでいたのです。

ヘルパーはたった一つで大丈夫です。ヘルパーに紐を通し、おへそのあたりで結び目を作って、巻いておけばよいのです。

筆者は、紐を結ぶ子どもが多発すると指導時間が削れるため、「ワンタッチヘルパー」というボタン一つで取り外しができるベルトを使っていました。

ですが、お子さん一人だけならヘルパーに付随している紐で十分だと思います。

ヘルパーがあると、「いざ沈んでしまっても浮かんでくることができる。」という安心感があります。だからこそ、恐れずに、伸び伸びと、遠泳とも言える距離にチャレンジすることができていたのです。

正直「クラゲ足平泳ぎ」の段階で、ヘルパーを外しても大丈夫なレベルの泳力を身に付けることはできています。

筆者も「ドルフィンキック」を教えた後に、「外してよい」と指示を出しました。このステップまでクリアしている子どもは、ヘルパーを外しても全く問題なく泳いでいました。

この「ほんのちょっとの工夫」が大きな結果の違いを生み出すことになるでしょう。

クロールの教え方

この記事は「3日間で25m泳げる方法」というテーマで書かれています。

筆者は、平泳ぎを習得した後にクロールを指導するのですが、その方法も+αとして記載しておきます。ポイントは同じです。「手の動き」「呼吸」「キック」を一つ一つ教えていくのです。

  1. けのびを教える
  2. クロールの手の動きのみを教えて練習
  3. ビート板+手の動き+呼吸の練習
  4. ビート板なしで手の動き+呼吸の練習
  5. バタ足を加える

とにかく「バタ足」を最後にすることです。「バタ足」はとても激しい動きなので、酸素の消耗が激しい。すぐに呼吸が乱れてしまいます。

だから、足の動きがない状態でも、手の動きと呼吸だけで十分泳げる状態を先に作っておく必要があります。

まとめ

25mを泳ぐためには、楽な呼吸を身に付けること。これが秘訣です。そして、「呼吸」「手の動き」「キック」と分けて教えていくことです。

この「連続だるま浮き」から始める平泳ぎは、面白いほど記録が伸びていきます。筆者はこの指導法に出会って、「人間の可能性ってやっぱり素晴らしいな。」と何度も感動を味わってきました。

この記事を読んで、一人でも多くの人にこの感動を味わってもううことができれば、書いた甲斐があるというものです。この指導法を試し、上手くいった体験や困ったことがあれば、教えてください。

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