【元教師】重要な非認知能力10選とその育て方!学力より重視される理由と伸ばし方を徹底解説!

家庭教育のすすめ

子どもの「生きる力」を伸ばすためには非認知能力を伸ばすことが必要である。

小学校教員時代に、そのように信じ、「テストやIQでは計測できない力=非認知能力」を伸ばす実践を重ねてきました。そして、実際に子どもたちのその力を伸ばしてきた実感を感じてきました。過去の記録を振り返ってみます。

年度末、別れの時に、子どもたちに1人1人に渡したメッセージです。その子ども1人1人の美点である非認知能力に焦点を置いて、「あなたはこのような力があるんだ」ということを伝えていたのです。

そして、子どもたちも、自分たちの成長を自覚していっていました。年度末に書かせた「1年間の成長」というテーマで書かせた作文の中に、子どもたち自身の力の自覚が感じ取れます。

そして、その「力の自覚」に対し、教師の視点から「それはこのような力なのだ」というメッセージをコメントとしてその子どもに贈っていました。(青字が子ども、赤字が筆者。)

・・・この一年間、一番成長したのは、「三重とび」です。日記でも書きました。最後の一文は「やっと。」。なぜやっとと書いたのか。それは、2か月ぐらいかかり、なわのいたさにも何度もたえ、何度もびびらなかったことです。ぼくは、そのようにあつくなれたことが成長したことだと思います。

外見はクールに見えますが、その内には熱い焔が秘められています。真っ赤な焔ではなく、青い静かな焔です。自分が心に決めた目標に向かって、毎日、淡々と、絶やさずに、努力できる青い焔です。人が出来ない大きな努力をするのではなく、誰もができる簡単な努力を、誰もできないほど続けるのです。だから、〇〇君は、強い。そんなあなたの静かな熱さが、大好きです。4年生でも、必ず、進化を遂げます。

上記の記録は、小学3年生のときのものです。3年生でもこれだけの能力の目覚めを感じています。中には、学校だけでは書ききれず、家で原稿用紙10枚以上もの作文を書いてくる子どもや、夜中の2時の寝落ちするまで書き続けてきた子どもがいました。こちらからの強制はなく、全て自主的にです。

この記事では、筆者が重要と考えている非認知能力ベスト10と、その伸ばし方を、筆者の積み重ねた実践を織り交ぜながら、お伝えしていきます。

非認知能力が注目される背景

今や、非認知能力は、学力よりも重視されているといっても過言ではありません。なぜ、学力よりも重要であると言えるのか。その根拠となっている2つの調査を紹介します。

ジェームズ・ヘックマン教授の幼児教育の研究

シカゴ大学のヘックマン教授の研究は、教育関係者や子育てをしている親たちに強いインパクトをもって、周知されていきました。

研究結果を簡単に言えば、「幼児時期などの早期教育によって向上するのは、学力(IQ)ではなく、非認知能力であった」というものです。

就学前の幼児教育を行った子どもとそうではない子どもの追跡調査を行い、平均所得や高校卒業率、生活保護受給率などを長期にわたって調べたのです。そして、この調査は以下のような結果を示しました。

【早期教育を受けた人たちが、受けなかった人に比べて高かった数値】

高校卒業資格を持つ人の割合が20%高い

・5回以上の逮捕歴をもつ人の割合が19%低い

・月収2000ドルを超える人の割合は4倍

マイホームを購入した人の割合が約3倍

そして、重要なのはその差を生み出した要因です。研究の結果によると、「学習面を強化しても、IQの数値を一時的に高めるだけで、長期的に高めることにはつながらない」ということが分かりました。

そして、早期教育によって伸びたのは、IQではなく、「学習意欲」「自制心」「粘り強さ」などの非認知能力であったことが判明したのです。

デビット・ウエイカート教授らの学習達成度調査

もう1つの調査は、1967年に既に行われていた、貧困地域の子どもたちを3つの対象に分けて行ったものです。

1つ目の調査対象は「遊び中心」の伝統的な保育園、2つ目が大人が少し介入する保育園、3つ目はワークシートやテストで早期教育を行う「知識中心」の保育園です。

15歳時、23歳時と、長期的な追跡調査を行った結果、以下のようなことが分かりました。

・「知識中心」の保育園で過ごした子どもたちは、最初は優位だったが、すぐに他の2つのグループとの学力の差がなくなった

・「知識中心」の保育園で過ごした子どもたちが犯罪者になった確率は、39%あり、他のグループの約3倍の数値だった

幼児期から、将来の学力を心配するあまり、知識中心の詰め込み教育をすることが如何に危険なことであるかが、数値に現れています。

「非認知能力→学力」という優先順位を、決して軽視してはいけないのです。

非認知能力の重要性をお伝えした上で、ここからは、「どのような非認知能力が必要であるのか」と「それを高める具体的な方法」をまとめていきます。

第1位 自己肯定感

育成するべき非認知能力の圧倒的第1位は「自己肯定感」です。「自己肯定感が高ければ、人生の9割成功する」と言っても過言ではありません。

自己肯定感が高い状態とは、自分に過度な自信をもっているのではなく、ナチュラルに何事も前向きに考え、自分の力を信じている状態のことを指します。

自己肯定感は全ての非認知能力の土台です。自己肯定感が高ければ、他の全ての非認知能力は自然に伸びていきます。逆に、自己肯定感の土台がもろければ、他の非認知能力はうまく積み重なっていきません。非常にアンバランスな状態になります。

そう考えると、生後から3歳頃までに、「自己肯定感を育む」という1点に絞って子育てをすることが、最高にパフォーマンスが良く、最強の方法であることが分かります。

自己肯定感が高ければ、自分自身の成長のために、何事にも自然な意欲で取り組むことができます。自分の力を信じているので、やり遂げることができます。人を信じることができるので、人から信頼されます。

結果、自分のやりたいことを自己実現でき、穏やかで親しみに満ち溢れた人間関係に囲まれた人生を送ることができるのです。

自己肯定感を高める方法

子どもの自己肯定感は、0~3歳の時期に形成されます。その間に「無条件の愛情」を注ぎ続けるのです。

良い行動でも、悪い行動でも、物事の良し悪しはきちんと伝えながらも、愛情は変わらず注ぎ続ける。つまり、行為と人格を分けて考え、感情的にならずに接し続ける、ということです。

また、3歳以降であっても、子どもは外からの変化で自己肯定感を高めることができます。だからこそ、その子どもの美点を認め、肯定的な言葉・行為を送り続けるのです。

詳しくは下記の記事にまとめてあるので、もっと知りたい方はこちらを参考にしてください。

一方で、大人の自己肯定感を高めたければ、子どもとは別の方法でアプローチをする必要があります。なぜなら、大人は価値観が固定されてしまっているので、外からの働き掛けではなかなか変化することができないからです。

この場合は、自分の過去の傷を見つめ、癒した上で、自分を苦しめている価値観や認知の歪みを修正していく必要があります。

正しい手順を踏めば、何歳からでも自己肯定感は「回復」することができます。そのステップは以下にまとめてありますので、参考にしてみてください。

自己肯定感が最強の非認知能力です。そのことを前提にした上で、2位以降の重要な非認知能力を書き記していきます。

第2位 レジリエンス

第2位は「レジリエンス」です。レジリエンスは、「自己回復力」「逆境力」とも呼ばれます。多少思い通りにいかないことがあっても、自分を信じ続け、そのショックから立ち直り、乗り越えていくことができる力を示しています。

人生は、山あり谷ありの長距離走です。下り坂ですいすい進むことができる時は、誰だって調子が良いものです。しかし、上り坂の時に、どれだけ立ち向かうことができるかが、人生の大きな分かれ道であるといえます。

レジリエンスが高ければ、上手くいかない問題点はどこで、それをどうすれば改善していくことができるのかを冷静に分析し、経験を自分の力としていくことができるのです。

このレジリエンスは、実は、「自己肯定感」の進化形です。「自己肯定感→自己効力感→レジリエンス」の順番に積み重なっていきます。

レジリエンスを高める方法

基本的に「レジリエンスを高める方法」は、「自己肯定感を高める方法」と同じです。自己肯定感が高まると、次第にレジリエンスが形成されていきます。

もう少し詳しく解説すると、自己肯定感がしっかりと築かれていることにより、常に自分や周囲に安心感を抱いた状態で過ごすことができます。

すると、「自分の力を発揮したい」「人の役に立ちたい」という欲求が自然と湧いてきます。それが「自己効力感(セルフエフィカシー)」です。

基本的に、自己肯定感が高いのですから、周囲に信頼を寄せ、周囲からの信頼に心から応えようと、力を発揮することができます。結果「力を発揮できた」「人の役に立てた」という経験を積み、自信をつけていきます。

その経験が積み重なっていくと、「自分は必要とされている」「自分は能力のある存在だ」と認識するようになっていき、ちょっとやそっとの困難があったとしても、「自分ならできる」と最後までやり遂げることが増えていきます。

その「困難があってもやり遂げる」経験を積み重ねていく内に、「多少思い通りにならないことがあっても自分ならなんとかなる」というレジリエンスが形成されていくのです。

結局は自己肯定感という土台をしっかり築いているか。第1位で自己肯定感が最強と述べていた理由が少しは分かってもらえたでしょうか。

第3位 主体性・意欲

第3位は主体性・意欲。主体性や意欲が高ければ、勉強、人間関係、リーダーシップ、運動など、あらゆる面で自分の最大限の力を発揮し、活躍することができます。

人よりも多くの経験値を積み、人よりも成長し、そしてまた主体性と意欲が高まっていく。そのような正の循環を回していくことができます。

間は、感情が動くときが、最も効率よく学ぶことができるです。

常にワクワクした状態で、あらゆる経験を吸収していくことができる「主体性・意欲が高い人間」は魅力的です。結果、自然と人が集まり、「クオリティ・オブ・ライフ」の高い人生を送ることができるでしょう。

主体性・意欲を高める方法

自己肯定感が高ければ、主体性・意欲が自然と高まっていくことは、まず前提条件です。

その上で、主体性・意欲を高める働き掛けをあげるならば、「子どもの意見を否定しない」ということです。

主体性・意欲を奪ってしまう行動は、子どもの意見に耳を傾けず親側の都合、意見を押し付けてしまう行為なのです。

子どもが普段から何気なく思った発想に、「いいね!」「面白いね!」「なるほど」という肯定的な反応を示す癖をつけることがとても大切だと思います。

すると、子どもは、もっと心を開き、様々な自分の考えを話してくれるようになります。

また、子どもが間違ったことをしたり、人を傷つけるような行動をした時も、頭ごなしに叱るのではなく、まずは、なぜそのような行動をしたのか理由を聞くことです。

その上で、なぜそのような行為が許されないのかを、子どもが納得するまで言葉で説明することが非常に大事です。これは、第4位の「自制心」の形成にも関わってきます。

第4位 自制心

「自制心」とは、自分自信の欲求をコントロールする力です。

人間には三大欲求があります。「睡眠欲」「食欲」「性欲」です。これらの欲をバランスよく調整し、コントロールすることができるのは、「自制心がある」分かりやすい例であるといえます。

そして、自制心があれば、ルールを守って生活することができます。自分に「~したい!」という欲求があったとしても、相手の立場や状況を考えて、物事を譲ったり、思いやりのある態度をとることもできます。

社会的に成功している人は、様々な日々の思い通りにいかないことをグッと歯止めをかけながらも、周囲のために、自己実現のために行動できる特徴をもっています。

周囲への貢献心があり、能力があったとしても、自分自信の感情や欲求を抑制できなければ、周囲に迷惑を掛けてしまったり、期待を裏切ってしまったりする結果をもたらすでしょう。

自身が自立していくためには、自制心はまさしく大切な非認知能力なのです。

自制心を高める方法

自制心を高める1番の方法は、理由や意図をしっかりと説明をするということです。

「なぜこのようなルールが存在するのか」「なぜ人を傷つけてはいけないのか」そのようなことを、1つ1つ言葉で、相手が納得するまで、根気よく説明するのです。

もちろん、1回では伝わらないこともしょっちゅうです。それでも、何度も説明を繰り返すのです。感情的にならずに、です。

前章でも説明した、「悪い行動をしたときは、頭ごなしに叱るのではなく、きちんと子どもに理由を聞く」のもそうです。子どもの思いを理解した上で、正しい行動を言葉で伝えていくのです。

その「大人自身が自分の感情を自制して、根気よく説明をする姿」を見て、子どもは感情よりも物事の理由を理解していくことの大切さを自然に学んでいくことになります。

すると、親以外の人間にも、自分の感情や欲求を抑制した上で、接する姿が増えていきます。だから自分よりも周囲の状況を見て、それに合わせることができる「社会性」にもつながっていくのです。

第5位 社会性

日本では、よく協調性が大切にされます。しかし、協調性にも2種類あります。

自分の考えをしっかりと持った上で、それを周囲のためにどう生かすかを調整しながら示す協調性。一方で、同調圧力に負けて、仕方なく周囲がやっているからやるという協調性があります。

大切なのは、もちろん前者です。

健全な協調性を発揮するためには、自分自分がある程度自立していることが必要条件になります。だからこそ、「自己肯定感」「レジリエンス」「主体性・意欲」「自制心」といった自分自身を確立していく非認知能力が「社会性」よりも上位にくるのです。

社会性は、コミュニケーション能力、相手の意図やニーズを把握する力、調整力などが含まれます。

人は一人では生きていくことはできません。いくら能力が高くても、周囲に一切理解を示さない人であれば、社会からは孤立し、その能力を発揮する機会や場所を見つけることができない状態になってしまいます。

結局は、自分自信の力を高めていくのは、社会に貢献したり、人に喜んでもらうためです。だからこそ、その架け橋となる「社会性」を育む必要があります。

「社会性」を高める方法

社会性を育むのは、遊びです。それも自分一人だけではなく、周囲とルールや世界観を共有して行う遊びです。

ここに、ある面白い調査があります。お茶の水大学名誉の内田伸子教授が行った、20代社会人の子どもをもつ保護者1000人に行った調査です。

「小学校入学前の子育てで意識していたこと」の項目に致し、偏差値68以上のいわゆる「難関大学」に合格した子どもの保護者の35.8%が「思い切り遊ばせること」と答えているのです。

それだけ、「遊び」には、人間の力を向上させる力があり、だからこそ子どもは、放っておいても遊びに熱中するのです。それは、人間が生きるために必要な力だからです。

そして、一人遊びから、二人遊び、集団遊びと、遊びのステージを変化させていくことにより、人との協働生活というものを経験値として学び取っていくのです。

「遊び」が育む力は社会性以外にも様々あります。それは「集中力」であったり、「創造力」であったり、「やり抜く力」であったり、です。ここからは、それらの側面にもスポットを当てていきます。

第6位 やり抜く力

アンジェラ・ダックワース氏が著した本に『GRIT やり抜く力』があります。

その本の中で、アンジェラ氏はこのように主張しています。

長い目で見れば、才能よりも大切なのはやり抜く力(GRIT)である。

やり抜く力とは、「一つの重要な目標に向かって長年の努力を続ける力」のことです。

そして、知能のレベルが最高ではなくても、最大限の粘り強さを発揮する人は、知能が高くてもあまり粘り強く努力しない人よい、はるかに偉大な功績を収めるということが、事例や調査から分かっています。

世間を見てもそうですが、社会的に成功している人は、「このようなことをやり遂げたい」という思いがあり、それに対して周囲に左右されずに没頭した努力を長年続けることができる特徴をもっています。

何か大きなことを成し遂げたいという人ではなくても、幸せな家庭を築くためには、ある程度のやり抜く力は必要です。

やり抜く力は、自分の思い描く人生を築くための実行能力と考えることができるでしょう。

やり抜く力の高め方

やり抜く力は、自分が情熱を燃やす物事にこそ真価を発揮します。ですので、まずは情熱を注げる物事を見つけるということが大切です。

興味をもったことは何でもやらせてみる。気になった物事をとことん調べさせてみる。それを親と一緒にやり、感動や喜びを分かち合う。

これは、「挑戦心」や「好奇心」を育てる上でも大切です。

そして子どもが「やり遂げたい」と思った目標ができたのならば、その目標を達成するためのあらゆる手立てを一緒に考え、納得するまでやり続けるのです。

筆者の例では、「半年間かけてこうもり振り降りという鉄棒の技を習得した子ども」がいます。「絶対に達成したい」という燃えるような子どもの意欲をサポートするために、毎日一緒に練習に付き合いました。そして、日々の進歩を伝えたり、進歩が見られなくても努力の経験値は蓄積されていることを伝え続けました。

そうやって大人がずっと寄り添い続け、そして達成したときの喜びを味わう。その達成感や経験こそが「やり抜く力」を培っていくのだと思っています。

もちろん、大人が強制した目標ではなく、子どもが自発的に決めた目標において、です。

また、習い事などをすぐにやめないように、「1年間は必ずやる」といった約束を決めておくとよいでしょう。

結局、1年間続ければある程度上達します。この「継続的に練習すれば上達するのだ」という経験を小さい頃から積ませておくことも、やり抜く力の育成に必要なのです。

第7位 挑戦心

日本人は、「挑戦心がある人が少ない」とよく言われます。そして10年間学校現場を見てきた筆者も、そう思います。

小学校教育の段階で、かなりの子どもが挑戦をしない姿勢を身につけてしまっているのです。

挑戦心とは、「リスクがあることを承知の上で、勇気がある一歩を踏み出すことができる」マインドです。

世の中で大きな成果をあげている人たちは、ほぼ全員挑戦心をもっています。独立する、転職する、新しいプロジェクトに立候補するといったこともそうです。

恥をかくこともあるかもしれません。先行きが見えない分野に飛び込むことには不安もあります。

それでも挑戦をして、人よりも貴重な経験を積み重ねた人が成長をしていくのです。そして、成長をすればするほど、よりの質の高い経験を積める仕事がその人に集まってきます。

挑戦心は大きな大きな武器なのです。

挑戦心を高める方法

1番は、周囲の人が挑戦を楽しみ、そして成長している姿を見せることです。

筆者の学級では、とにかく挑戦する人が次々と増えていきました。それは、挑戦をした方が得をする状況が常態化していたからです。

挑戦をすると褒められる。挑戦をすると学級通信に取り上げられる。挑戦をすると実際にできることが増えて成長する。

挑戦をした方がプラスになる人が、1人、また1人と増えていくにつれて、「挑戦の輪」が勝手に広がっていきました。

これは、家庭でも同じです。挑戦していることを褒めたたえる。誰もやらないことをやっている姿を「自分の意思がある」と認める。そして親自身も挑戦を楽しむ。

そうすることで、挑戦とは人生を好転していくものだということがインプットされていきます。

1番挑戦心を削ることになるのは、間違いを指摘することです。90点も取れているのに、「10点間違えている」と、欠けている箇所に注目する親の元では、挑戦心は育まれません。

「その意見は50点はあるね。あと少し!」「その行動は既に80点レベル!」と、できていることに注目するような声掛けをしていくことで、将来、人が躊躇うことにも挑戦できる貴重な人材に育っていくでしょう。

第8位 ホスピタリティ

「ホスピタリティ」とは、献身力のことです。

人生は、まず自分自身を高め、満足させていくことが大事です。それと同時に、自分の高めた力を周囲にどれだけ与えるかという視点も同じくらい重要なのです。

自分が利益を得ても、それを自分のためだけに限定しようとする人は、私利私欲にまみれた人間になります。周りから人は離れていき、自分の心はますます貧しくなっていきます。

逆に、周囲に分け与えようとする人は、分け与えた分、喜びと感謝が返ってきます。それが自分を満ち足りた気持ちにさせてくれるでしょうし、「もっとたくさんの人を幸せにしよう」というエネルギーにもつながっていきます。

社会的に成功した人が周囲に分け与えるのではないのです。周囲に分け与える人間性をもった人が、結果的に社会的に成功を収めるというのが正しい。

だからこそ、幼児期から、そのホスピタリティを育んでおく必要があります。

ホスピタリティを高める方法

ホスピタリティを高めるためには、子どもが誰かのために行動したときに「ありがとう」という言葉を使うことが大切です。その上で「~の力がある」ということを伝えましょう。

「洗濯物をたたんでくれてありがとう。家事をてきぱきこなす力があるね。」といった具合にです。

これは、不登校児へアプローチするときに使われる方法です。

「ありがとう」で人へ貢献することの心地よさを味わってもらう。そして「~の力がある」という言葉で、「自分は人の役に立てる存在だ」ということを意識してもらうのです。

人は、「自分は能力がある」と感じることができたときに勇気が出ます。幼いころから、周囲の人に力を認めてもらった子どもは、「誰かのために役立てる」という自信をもって行動することができるようになるでしょう。

また、自分以外の誰かのために、献身的な生涯を送った人の伝記、物語、話などを繰り返しすることも効果的です。

世間から見て「社会的成功を収めている人」の本を読むと、幼い頃から母親にこのように言われて育ったという方が多くいることに気付きます。

「お前は、世のため人のために役立てる人間になりなさい。」

このように、「人間がよりよく生きるための価値観」を子どもに繰り返し伝えることは、結果的に、人間性をすばらしいものにし、周囲の人にも恵まれる豊かな人生を送ることに影響を与えることができることでしょう。

第9位 創造力

AIの進歩が目覚ましい現代では、単純作業である仕事はどんどんなくなっていくといわれています。

代わりに必要とされる度合いが大きくなるのが、創造力(クリエイティビティ)を発揮する仕事です。指示されたことをただこなすのではなく、ゼロから自分で仕事を創り出していく力が必要となってきます。

そして、残念ながら、大人になってから急に創造力を求められたとしても、容易に鍛えていくことはできないのです。二十歳になる頃には、大まかな人間性は決まってしまう。だからこそ、クリエイティビティを伸ばすのは幼児期が最適なのです。

創造力を高める方法

創造力を高める方法は、ズバリ「遊び」です。

「社会性」の章でも述べましたが、「難関大学」に合格した子どもの保護者が「思い切り遊ばせること」を幼児期に重視していたという調査結果があります。

本当に自分の全身全霊を使って遊びに没頭し、とことん遊び尽くす経験は子ども時代にしかできません。10歳までが勝負です。

夢中になって遊ぶ中で、「もっと楽しく遊ぶことができる方法」を、子どもたちは、工夫し、生み出していきます。子どもたちは、元々、創造の天才なのです。

ただ、「遊び」といっても、工夫の余地がない遊びはあまり推奨できません。

例えば、ゲーム。ゲームは制作者が作った枠組みを飛び越えることなく、その中で遊ぶ玩具です。

幼児期であれば、モンテッソーリ教育に代表されるような玩具が例としてあげられます。他にも、人形遊び、レゴ、ラキュー、おままごと、お絵かき、ごっこ遊び、外遊びなどが、クリエイティビティを刺激してくれる遊びとなるはずです。

幼い頃に、無理やり勉強を強要した子どもは、必ず心に歪さを残してしまいます。とことん遊び尽くした経験なくしては、人間は適切に次のステージに移ることができないのです。

勉強に対して好奇心や主体性を発揮するのは、その後。そのことを踏まえた上で、子どもがとことん遊ぶことができる環境を用意してあげてほしいと思います。

第10位 好奇心

最後は好奇心です。好奇心はそこまでなくても生きていくことはできます。

一方で、世の中で大成している人物は漏れなく好奇心が強いです。気になることがあると気が済むまで調べつくす習性をもっている人が多い。

そして、そこまでの人物になるビジョンがなくても、ある程度の好奇心は必要です。なぜなら、好奇心が強い人ほど成長できるからです。

好奇心をもって様々なことを調べていく内に、周囲から頼られるようになり、その期待に応える中で、周囲を幸せにする力もまた、拡大していきます。

好奇心を高める方法

好奇心は、誰しもが生まれながらにしてもっているものです。

幼児期には、日常のあらゆることに「なんで?」と疑問をもち、質問をし続ける時期があるのは皆さんも知っていると思います。その疑問をもつ姿勢を、大切に大切に育てていけばよいのです。

具体的には以下のような親の関わりが大切になってきます。

①子どもが質問をしてきたら、「どうしてだと思う?」と思考を促す

②子どもの考えを「発想力豊かだね」「その考え方は面白い」と認める

③親が聞かれても分からないことは「一緒に調べてみようか」と子どもに寄り添う

④様々な事典を家に用意しておき、「気になったら調べることができる」環境を整えておく

⑤何気ないことにも疑問をもつことや、自分で徹底的に調べる姿勢を大いに褒める

最も大切なのは、「親が一緒に調べる」でしょう。子どもは親が思っている以上に、親の姿から無意識に様々なことを学んでいるものです。

「一緒に調べる」だけの楽しむ余裕があったり、好奇心旺盛であったりする親の元で育った子どもは、大小はあれど、確実に好奇心旺盛な人間に育っていきます。

後は、その姿をとにかく褒めるのです。周囲に話すときも「うちの子は好奇心旺盛で~」と話していれば、子どもは「自分は調べるのが得意なんだ」と思うようになりますから。

筆者も、授業で扱った内容を、自主学習で調べてきた子どもがいたら、大いに褒めていました。

個人的に、学級全体で、保護者に手紙を書いて、学級通信で、同僚の先生に広めて、などなど多種多様な手段を用いて褒めることは、とても効果があります。

是非、試してみてください。

まとめ

非認知能力を向上させる上で、筆者はとても大事にしていることがありました。

①子どもを信じること

②コトバの力を信じること

「子どもには本来自分自身で問題を解決していくことができる力がある」という考えを前提に、あらゆる場面で子どもへ言葉をプレゼントするようにしていました。

冒頭で示した、以下のようなものです。

口頭で褒める、日記で毎日コメントをして勇気づける、保護者へ手紙を書いて褒める、学級通信で子どもへのメッセージを記載する、別れの際に手紙を書く、などなどです。

その言葉の蓄積が、子どもに勇気を与え、行動するきっかけを作り、そして行動の結果成長するという正のサイクルを生んでいたと思っています。

子どもを信じること。信じていることを言葉や行動できちんと伝えること。

その積み重ねで、子どもの非認知能力=生きる力は知らず知らずの内に育っていくでしょう。

読者の方々のお子さん、生徒児童が、この変化の激しい現代をたくましく生きていけることを願っています。

この記事が「よかった」「ためになった」と思われた方は、SNS等でシェアしてくださるとうれしいです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました