「受験が成功するかどうかの9割は母親で決まる」という言葉を知っているでしょうか。
これは、「母親の知能やIQを子どもが受け継ぐ」という話ではありません。母親の教育に対する考え方と、家の環境をどのように設計しているのかで、子どもの能力に差が出るということを、少なからず言い表しています。
では、「賢い」「頭がよい」と言われる子どもが育つ家に見られる共通点とは何なのでしょうか。この記事では、テレビ(メディア)の影響、勉強場所、そして読書環境という観点から家庭環境やその考え方を解説していきます。
人間を変える、自分が変わるということは大変です。かなりの労力を必要とします。ですが、環境だけならば簡単に変えることができます。そして、かけた労力に対して生み出される効果は絶大です。
この記事を読めば、コスパ、タイパよく、子どもの能力を無理なく、自然に育むことができます。ぜひ、最後までご覧ください。
賢い家ではテレビはどこに置く?スマホの扱いは?
結論から言えば、「テレビを置かない」のが、最も子どもの頭を賢くします。
カリスマ家庭教師として数々の家を訪問し、家庭環境のコンサルティングを行う松永暢史さんは、テレビを置かない家庭の子どもは、次のような共通点があると述べています。
①飲み込みが早い
②集中力が高い
③独創性がある
テレビは、こちらが意図していなくても、楽しい情報や役に立つ情報を提供してくれます。スマホやタブレットも同じです。
自分から積極的に、主体的に行動しなくても、面白い動画を見ることができる。それは一見便利なことのように思いますが、受動的な子どもを育ててしまう原因となります。
「テレビ・スマホ・タブレットを家に置いてはいけない」とは言いません。情報化社会の現代では、それらのツールがなくては逆に取り残されてしまいます。
ただし、テレビ・スマホ・タブレットを置く場所とルールは重要です。例えば、以下のようなポイントを考えてみるとよいでしょう。
①リビングに置かない
②ダイニングに置かない
③見る・使用するときは時間制限を設ける
これらのポイントは、幼少期であればあるほど重要です。
リビングやダイニングに情報ツールを置かないことにより、家族間のコミュニケーションが増えます。これは、子どもの言語感覚を養うために非常に大切なことです。
また、集中する遊びや勉強をやる場所に情報ツールがないことによって、集中力と創造性を磨くことができます。
とある調査では、「幼児期である2.5歳~5.5歳の間に見るテレビ・スマホの視聴時間」の合計値が算出されました。両親とも大卒の家庭は、合計2966時間。両親ともそうではない家庭は3539時間。この時期で既に574時間もの差が出ています。
これが、小、中学校となると、どんどん差が開いていくのです。親の考え方次第で、家庭環境に大きな違いが生まれていることがよく分かる例だと思います。
勉強はどこでするべき?発達段階別の勉強場所
さて、テレビやスマホが目につかない環境を作ったことによって、勉強・集中しやすい環境に一歩近づきました。次は、どこの場所で勉強するか、です。
結論から言えば、幼児~小学校中学年まではダイニングルーム、小学校高学年からは密室ではない自分の部屋で勉強することが、子どもが賢くなる家のルールであるといえます。
幼児~小学校中学年はダイニングルームで勉強させるのがベストな理由
幼児~小学校中学年までは、大人の目があり、安心感と緊張感がほどよく存在するダイニング(リビング)が丁度よいでしょう。
この時期の子どもは、見通してを持って行動することや、計画能力・実行能力が未熟である場合が多いです。だからこそ、「帰ったらまず宿題」としておき、親がリマインダーやサポーターの役目を果たすのです。(ここでは、家にフォーカスしているので親となっていますが、学校後「学童保育」などの何らかの施設に預ける場合も同様のことがいえます。)
そうやって、「やらなきゃいけない」状況の中でも、励まされ、褒められ、労われという関わりを通していくことで、安定した習慣として勉強が根付いていきます。
子どもが「勉強部屋がほしい」と言うままに、部屋を与え、「買ってあげたんだから勉強しなさい」と言う。これは子どもの年齢によっては、無理なのです。この場合は、時期尚早に「自分の部屋で勉強」を選択肢にしてしまった家庭の失敗となってしまうのです。
だからこそ、予め、子どもにしっかりと説明をし、家族間でも話し合い、約束をした上で、適切な時期に自分の部屋を与えることが大切になります。
小学校高学年からは「密室ではない」自分の部屋
4~5年間かけて、じっくりと勉強する習慣を身に付けてきたら、勉強部屋にシフトしてもよい段階でしょう。
ただし、「密室ではない」自分の部屋です。
人間は怠けるもの。それは大人も同じです。人に全く見られることのない環境にいる場合は、自分の好きなことを好きなだけやれます。例え、「勉強は必ずやる」と決めていたとしても、様々な誘惑に負けてしまうことは多々あるはずです。
だからこそ、「扉が完全に閉まらない状態にしておく」「扉は外しておく」などの、いつでも誰かに見られる可能性があるという状況を作り出しておくのが大切なのです。
常に、一定の緊張感があるからこそ、自分の部屋でも今まで通り勉強するという習慣を根付かせることができます。
ただ、これが使えるのは、小学生~中学1年生ぐらいまででしょう。思春期になれば、自分のプライバシーに勝手に入ってこられる方がストレスになる場合があります。
その時期に入る前に、習慣化させる。そしてもう1つ。勉強部屋の環境も整えてしまうのです。
勉強部屋のレイアウト+ベストな読書環境とは?
いざ、自分の部屋で勉強し始めたとなっても、周りに誘惑するものが置いてあったり、集中できない環境であったりしたら、勉強部屋を与えた意味がありません。
そこで、勉強部屋の環境調整を、「机の大きさ」「部屋のレイアウト」「本棚」の3点から解説していきます。
机の大きさ
机は横幅が大きいものを選ぶのが得策です。これは、ダイニングテーブルにも同じことがいえます。
勉強するスペースの面積は、思考できるキャパシティに比例します。机が広げれば、脳の中も伸び伸びと創造力を膨らませて考えることができるのです。
これは、ノートも同じです。仕事ができる人、ノート術を工夫している人は、A4のノートを使用していることが多いです。それは、面積が大きいから。
面積が大きければ、それだけ色々なことを書きこんで、思考することができます。それを繰り返していく内に、シナプスが形成され、頭で考える時に、自然と広々としたノートや机が脳内で想起されるようになるのです。
横幅が大きい机が、脳を解放してくれます。
部屋のレイアウト
家具の配置は、勉強机を中心として考えていきます。勉強机に向かって座っている状態の視界には、余分なものが入らないことは大前提です。
ベット、本棚、玩具は必ず視界に入らないところに置いておきます。例えば、ベットは後ろ。そして、玩具は押し入れの中。本棚は入口の近く、といった具合にです。
特に、玩具やゲーム、漫画、小説などの一度集中し出したら止められなくなる趣味・遊びは、勉強机からできるだけ距離を離してください。
一度立って、机に戻ってくるのを「面倒だな」と思えるようにしておくのです。すると、誘惑する物を取りに行く頻度が減り、「いつの間にか、勉強に集中して1時間」といった状況が生まれるようになります。
ちなみに、ここでいう本棚は、漫画や小説などが入っている、趣味で楽しむ媒体が多く収納されている本棚です。辞書・辞典などの、学習に必要となるものを入れる本棚については、次の項目で説明します。
子どもの生涯年収を決める「本棚」
賢い子どもが育つ家は、本棚によく性格が表れます。そのような家庭によく見られる本棚の特徴をまとめました。
①本棚に本がたくさんある
②子どもがいつでも手に取れるように「児童小説名作全集」が置いてある
③両親もよく本を読む
④両親の読む本は、合理性や効率性を求める本もあるが、小説や文豪と呼ばれる著者の作品集が混じっている
「本が多い」「児童用の名作集がある」などはなんとなく予想できるかもしれません。しかし、親の文学に関する感性によって子どもの賢さが決まるというのは、意外な要素であると思います。
これは、「読書の本当の楽しみを知っている親」とも捉えることができます。効率化ばかり求めるのではなく、一見無駄とも思える味わい深い文学を愛していることが、人間の情操の深さを作り出しているのです。
そして、そのような人生の味わい深さを知っている親の元で育った子どもは、機知に富んだ子どもになっていくでしょう。
年収3000万円以上の人は、年収300万の人より38倍本を読むという調査結果があります。それだけ、読書環境は、将来の年収に関わってくるのです。
さて、本来の環境設定の話に戻ります。本棚の環境は、勉強部屋+家全体という2つの視点でポイントをまとめておきます。
①勉強机の隣に、辞書や辞典を置く専用の本棚を作り、いつでも手に取れるようにする
②児童文学全集のような名作を揃えておく+決して強制しない
③親が何よりも読書を楽しむ
子ども部屋は、漫画や小説を入れる本棚と、辞書・辞典を入れる本棚の2つに分けるのがポイントです。そして、親が常日頃から本を読んでおく。そうすれば、子どもは自然と読書をするようになります。
子ども部屋に、児童名作全集の本を置いておく必要はありません。それは、リビングでも構わないのです。家の目に見えるところにあるということが重要です。
すると、ある日、ふと名作全集の1冊を手にし、その面白さに没頭する。一旦その面白さに目覚めると瞬く間にシリーズを読破してしまうということが起こります。
何を隠そう、筆者もそのパターンで読書にハマりました。「十五少年漂流記」「ああ無情(レ・ミゼラブル)」、「巌窟王」から始まり、アルセーヌ・ルパンシリーズやハリー・ポッターシリーズにハマって読みまくった経験は、間違いなく、大人の読書習慣形成に貢献したと思います。
まとめ
『第53回全国大学生活協同組合連合会による学生調査』によると、「読書時間ゼロ」の大学生が、遂に過半数を超えたそうです。
それだけ、今の子どもたちは、幼児期から本を手に取る環境で育ってきていないという結果の現れであるように感じます。
しかし、逆に考えれば、子どもの頃に読書習慣を養われて育った大人は、希少種であり、他の人よりも差をつけることができるようになるのです。
読書は最も安価で、最も効率のよい投資です。読書をしている、いないでそこまで開かなかった差が、30代になって圧倒的に開き始めていることを、筆者はひしひしと感じています。
読書をする人は、40代、50代と生涯にわたって、優れた先人の知恵を学び、自分を成長させ続けるのです。読書習慣が年収の差を生み出すことも、頷ける話だと思います。
そして、上記のようなことは、勉強習慣にも同じことが言えます。
スマホ、タブレットの普及による情報入手の簡易化。塾などの外部への勉強を教える役割の委託。様々な要因によって、今まで守られてきた賢い子どもを育てる家の「伝統」が揺らいできています。
塾や学校ももちろん大事です。しかし、最も大事なのは、成年になるまでに最も長い時間を過ごすことになるであろう「家」なのです。
そして、その環境を整える大切さに気付いた親のみが、テレビ、スマホ、勉強場所といった項目に関して、確かな考えをもって、よりよい環境設定を行うことができます。
「周りがやっているからいいや」と安易に流されるのではなく、子どもの豊かな人生のために、何が必要かを粘り強く考えていく。その勇気ある決断が、子どもたちの人生をより豊かに導いていくのでしょう。
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