不登校はなぜ増えている?不登校になる背景と回復のステップ

発達凸凹に寄り添う教育

文部科学省が発表しているデータでは、毎年、不登校の子どもは増え続けています。

2021年度の調査では、前年度から4万8813人増えた24万4940人。10年前と比べると、小学生は3.6倍、中学生は1.7倍に増えています。そして、これからも、その数は増え続けていくでしょう。

なぜ、ここまで不登校の数が加速してきているのでしょうか。

筆者は元小学校教師です。10年前は、700人規模の学校でも、学年平均の不登校児の数は、0.5人といった状態でした。それが、5年、6年と経つ内に、毎年、どの学年を受け持っても、不登校の子どもが1人以上はいるという状況に出会い続けています。学校全体から見た、学年平均でいえば1.5人程度になっている印象です。

不登校は、学校だけの力で解決に導くことが、非常に労力を要する問題でもあります。学校、家庭、社会福祉サービス、医療などの連携と、適切な支援を得て、回復することができるのです。つまり、回復できる方法は存在するということです。

不登校について様々学んでいく中で、99%以上の不登校を回復してきたドクターや、自分の学級だけでなく、学年、学校中の不登校児を、たった1人を除いて、20人以上復活させ続けている現役教師などから、様々な知見を得てきました。

この記事では、その不登校回復に必要なステップを伝えていきます。

不登校が増えてきている時代背景

不登校が増加している背景は、とても複雑です。「承認欲求の時代」「家庭の孤立」「情報化社会」という3つの視点で解説していきます。

承認欲求の時代

戦後、日本国憲法を基に、日本という国が誕生しました。今の日本は、まだ、生まれて70ほどしか経っていない国家です。しかし、その短い間に、治安が整い、インフラが整備され、経済も豊かになり、安全で、豊かな国家へと成長しました。

その代わりに、近年は、「クオリティ・オブ・ライフ」や「ライフ・ワーク・バランス」が重視され、ブラック企業などの、労働に偏り過ぎていた社会体質を修正する世の流れになってきています。

成長やお金を得るために、労働や成果に注目し過ぎてきたことの反動で、生きがいや心の満足度を重視する価値観が優位になってきているのです。

社会全体がそうなっているということは、学校も、家庭も、同じように影響を受けているということです。より、心の満足度や、承認、愛といったことにウェイトを置くようになり、そこが満たされなかった場合は、従来以上に、精神的なダメージを受けるようになってきています。

そのような時代背景も、不登校増加の一因になっていると思います。

家庭の孤立

現代は、人と人とのつながりがとても希薄になっていることをひしひしと感じます。

学校と家庭が、和気あいあいとつながっていた、かつての日本の教育システムが分断してきているのです。保護者とも必要最低限の機会でしかつながりがありませんし、「学校外で起こったことは、家庭内で対処してください」というスタンスになっている学校も多いです。

しかし、これは、今まで何でもかんでも学校に頼り、教師という人材が潰れていってしまうという結果につながってしまっている以上、仕方のないことです。

また、地域の行事も減り、家庭同士が共同で参加するイベントも減っています。地域全体で1つの共同体という感覚が薄れ、隣人との交流もほとんどなく、誰も頼る人がいないという家庭が増えています。

だからこそ、「自分の家庭の問題は自分で解決しなければならない」と感じてしまう家庭が増え、よりストレス、負担を抱えるようになってしまっているのでしょう。

家庭内で問題が起きてしまっても、解決策も分からず、誰からも支援もなく、さらに悪化するという悪循環に陥っていく。そのような背景があることは、不登校増加の大きな要因であるはずです。

情報化社会

スマートフォンという革命的なツールが浸透したことにより、大抵の娯楽は、そこから得ることができるようになりました。現実世界で人とつながっていなくても、SNSというソーシャルネットワーク上で、人とつながることができるようになったのも、その1つです。

現代の子どもは、世に生まれたときから、周囲がスマホを使っています。地域の方々や二世帯で子どもを教育するという体勢が少なくなっている今は、親だけで子どもを育てるストレスに耐えることに限界があることも多いです。

だから、親が育児中もスマホに夢中になり、ストレスを発散させたり、子どもにスマホを与えることによって「静かになる時間」を作ったりせざるを得ない部分がどうしても出てきてしまいます。

そのような状況で育つ子どもは、当然ながら、人とつながる力は弱く、社会性を、従来に比べ、十分に備えていない人間に育っていきます。

人は、他者とつながることによってストレスを緩和させていける一面をもっています。その力が弱いということは、どうしてもストレス耐性が弱くなってしまいます。だから、心のエネルギーがすぐに切れてしまうのです。

加えて、学校に行かなくても、便利な情報ツールで、気をまぎらわすことができます。そうやって情報ツールに依存し、さらに社会と分断される悪循環に陥っていくのです。

不登校のメカニズム

不登校の原因には、主に3つの因子が関係すると言われています。それが、「子供因子」「家庭因子」「学校因子」です。これらは、どれか1つあれば不登校になるといったものではなく、複雑に絡み合っているものです。順々に説明していきます。

子供因子

子供因子とは、子ども自身の特性上、不登校になってしまう場合の原因要素を指します。

例えば、「学校にいるだけで、息が苦しい」と感じる子どもです。別に人間関係に困っているわけでもなく、家庭が支援してくれないわけでもない。ただ、学校というシステムにいることに、息苦しさや気持ち悪さを感じてしまうのです。

おそらく、「みんなと一緒にことをする」「ルールは守るもの」「決められたスケジュール通りに動かなくてはいけない」といった、学校の様々な要素を混ぜ合わせた雰囲気そのものが、本人の特性と相いれないものであるのかもしれません。

このような子どもは、小学1年生の段階で不登校になってしまう場合があります。

また、発達に凸凹を抱えていたり、不安傾向が強かったりと、特性上、学校というシステム自体にストレスを感じてしまい、不登校になってしまうという子どももいます。

家庭因子

不登校は「心のエネルギー不足で起こる」という主張をしているドクターがいます。1人ではなく、複数です。「家庭が子どもの充電基地」という役割を担っている以上、家庭がうまく機能しないことが要因となり、不登校になってしまうケースが確かにあります。

これが、「家庭因子」による不登校です。

家庭内で、子どもが肩身の狭い思いをしている。褒められることなく、否定されることが多い。逆に、家族に何らかの介護を要する人がいて、子どもながらに人のケアをする毎日であるなどの理由から、家庭でエネルギーのチャージをしてくれる人がいないのです。

不登校児にとって、学校へ行くことを「戦いの地へ行く」と表現する方々がいます。勉強に集中力を使う。人間関係で気を遣う。集団生活上のルールを意識する。それだけ、学校という場所は、エネルギーを消耗する場所なのです。

だからこそ、「学校から帰ったら、リラックスして、エネルギーをチャージし、次の日も登校できるように力を蓄える」という場に、家庭がなっている必要があります。

しかし、昨今のどの家庭も忙しい、様々抱えている状況では、それを実現できない家庭が増え、結果、不登校が増えているという結果につながっているのだと思います。これが、家庭因子の要素です。

学校因子

「学校因子」は主に「学習」と「人間関係」の2つの要素を示しています。

学習についていくことができない。その結果、周囲と比べたり、全体の場で恥ずかしい思いをするなどの傷つき体験があり、不登校の要因になってしまうというケースが1つ。

もう1つは、先生との人間関係、友達との人間関係がうまくいかないという要素です。「この人とは合わない」というものもあるでしょうし、「人間関係の複雑さに疲れた」というものもあるでしょう。そして、「いじめ」も外せない重大な要素となっています。

ストレス耐性

+αで、ストレス耐性のことも述べておきます。

ストレス耐性とは、「強靭な精神力で何があっても動じない」ということではなく、ストレスをしなやかに受け流し、周囲に助けを求めたり、機が熟すのを待てる力を指します。

ですので、「メンタルを鍛える」というよりは、「受け流す術を覚える」といった側面が重視されます。

これらのベースは、「安心感+自己肯定感」であり、決して、メンタルを鍛えれば克服できるものではありません。その点、注意が必要です。

家庭での不登校回復のアプローチ

不登校を回復するためには、家庭の協力が必須です。一番の肝といっていいでしょう。

もし、親自身が、「うちの子どもを不登校から復活させるためには、どうすればよいのだろう。できることは何でもしたい。」という「主体的に問題解決をしよう」という姿勢になっているのならば、不登校は、ほぼ解決します。

不登校回復のためには、次のステップが必要です。

①不登校についての捉え方をリフレーミングする

②自信の水を満たすための「コンプリメント」を1日3回以上行う

③コンプリメントの記録を毎日つける

不登校についての捉え方をリフレーミングする

不登校はエネルギー不足で起こり得るということを、前に説明しました。そのエネルギーを、ここでは「自信の水」と表現します。

これは、『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する』という本を書いた、森田直樹ドクターが命名した言葉です。エネルギーとは、すなわち、自信の量であると解釈しているのです。

子どもの自信をリカバリーしようとしているのに、「不登校になってしまうなんて、私の育て方が悪かったのか」「世間からどのように思われているのだろう」「もう二度と学校には行けないのではないか」と親が捉えていては、心からの支援を子どもに行うことが難しくなります。

だから、「不登校」という状態を別の視点で捉え直すのです。

そもそも、不登校になるということは「幸運」なことかもしれません。不登校になる子どもは、そうなるであろう因子をもっています。それは、本人の特性であったり、家庭環境であったりです。

ということは、今不登校にならなければ、いつか、また別の形で表出することになっていた可能性が高いのです。

もし、それが、社会人になってからだとすると、「うつ病」「パニック障害」「ひきこもり」などの症状として現れ、社会復帰が難しくなってしまうかもしれません。

だからこそ、復活するチャンスが高い、まだ、時間的猶予が許される学生のうちに不登校になるということは、子どもの残りの人生の「生き方」を考える上で、とても重要なことなのです。

森田氏も「不登校になってまで、親に『自分を助けてほしい』と訴えてくれる。こんな親孝行な子どもはいないよ。」といった内容を、相談にきた親御さんに伝えているそうです。

不登校になる子どもというのは、「自分の心を表出することができる素直な子ども」であり、親に「エネルギーが足りない、自信が足りないことを教えてくれる親切な子ども」なのです。

まず、そのように捉え直すことで、「不登校」を受け入れ、正面から向き合うことができます。すると、養育者である大人の中に、行動する勇気が生まれてくるはずです。

自信の水を満たすための「コンプリメント」を1日3回行う

「コンプリメント」は英語でいう褒め言葉のことを表します。この不登校回復においてのコンプリメンとは、「自信を与える言葉」と考えてもらえば大方間違いないです。

人の心の中には、コップがあると思ってください。その心の中には、自信の水がたまるようになっています。

何らかの原因で、そのコップに穴が空いている状態であったり、日常の外の世界で生活することに、たくさんの自信の水を消費するようになっていたら、自信の水は、減ってきているはずです。

家庭で、誰かから、自信の水を日常的に注いでもらっていなければ、その水は枯渇しているかもしれないのです。

だからこそ、自信の水を再び注ぐコンプリメントが必要になります。このコンプリメントのポイントは以下の3つです。

◆「行動+気持ち」を伝える(洗濯物をたたんでくれてうれしいよ。など

◆「~の力があるね」という言葉を加えると高度な自信の水になる(人助の力があるね。など)

◆「世界一幸せな親」になって言葉を発する

とにかく、「あなたの行動、存在がうれしい」ということ、「あなたには能力がある」ということを1日3回以上伝え続けるのです。

それは、どんな小さいことでも構いません。

例えば、「足音が聞こえた」こともコンプリメントにすることができます。「さっき足音が聞こえた。あなたがこの家にちゃんと存在していると感じてられて、うれしかった。」といった具合にです。

これを迷いのある弱々しい言葉で言っていても、自信の水にはなりえません。だからこそ、意を決して、「世界一幸せな親」だという設定にマインドセットし、堂々と、心から、コンプリメントを発するのです。

これを続けることで、子どもは、「自分の存在自体に価値があるんだ」「自分は人に喜ばれる存在なんだ」「自分には力があるんだ」という自信を得ていくことになります。

そして、コップに水がたまり、それが溢れるタイミングで、突然、学校に行き出すのです。

もちろん、それは、子どもによって個人差があります。しかし、ある日突然、「明日から学校に行くから」と宣言し、そのまま、不登校に戻ることもなく、外の世界で活動し続けるというケースが後を絶たないのです。

コンプリメントの記録をつける

コンプリメントの記録をつけるのは、主に、親側の支援です。

1日3回以上のコンプリメントを繰り返していても、何も変化が現れなければ、モチベーションを維持できなくなるかもしれません。

そこで、記録をつけ、「コンプリメントをどれだけ蓄積してきているか」を見える化するのです。加えて、毎日1日の終わりにその日のコンプリメントを書いていると、自然と振り返りをするようになります。

「今日のコンプリメントはどうだったのか」「このコンプリメントは響いた気がするから応用できる」「このコンプリメントは不自然だったから、次は改善しよう」といった具合に、記録をつけることによって、工夫するようになり始めます。

人は、「前進」や「成長」を感じることができない場合、不安になってしまいます。この記録ノートがあれば、迷いが生じたときに、ノートを見返し、「蓄積=前進」と捉えることで、心の支えとなってくれるでしょう。

学校での不登校のアプローチ

学校から不登校児へアプローチをしようとなると、様々なことを配慮し、環境を整えていく必要があります。ここでは、「本人の気持ち」「適度な登校刺激」「目標とスケジューリング」「学校の体制」「学習面/社会性のサポート」といった観点から解説していきます。

本人の気持ち支援が最優先

本人に全く学校に行く気がない状態では、いくら支援をしても、「登校するために~しよう」という視点になることはありません。だからこそ、「学校に行きたい」と思わせることが、まず、大前提の支援になります。

不登校になる子どもは、「学校に傷つき体験をもっている」「学校というシステムを無意味に感じている」「勉強する必要性を感じていない」といった特徴をもっている場合があります。

公立の小学校が、完全に相い容れないのだったら、フリースクールでもいいでしょう。「こちらの方がいい」という前向きな姿勢で、他の教育機関を選択しているのだったら、もちろん、それでOKです。

「どこにも行きたくない」「何もしたくない」といった状況は、やはり気持ちの面の支援を要します。学校で起こっている出来事、クラスの友達の面白エピソードといった、学校の楽しい一面を語ることや、社会で働くことの面白さ、未来の設計などを、その子どもの性格やニーズに合わせて、少しずつ語ることも必要かと思います。

まずは、その子どもの興味関心をもっている分野から距離を近づけ、少しずつ、楽しく未来ある話を入れていくのです。時には、一緒にゲームをやりながらこのようなことを語ってもいいでしょう。

可能ならば、このような学校からの支援と同時並行で、「コンプリメント」といった、家庭からの支援も行っていけることがベストです。そもそも「学校に行きたいと思ってはいるが、行動に移せない」という状態の子どもであれば、学校と家庭のダブルアプローチを連携すれば、かなりの効果を得られるはずです。

適度な登校刺激を行う

最もNGな登校刺激は、本人視点になっていない支援です。学校の都合、親の都合を押し付けている場合は、むしろ、登校刺激はしない方がよいでしょう。

あくまで、「本人がこのように望んでいるから、登校刺激をする」というスタンスでなければ、学校、教師の自己満足になってしまいます。

そのことが分かっていれば、登校刺激は、過度なプレッシャーを与えるものにはならないはずです。雑談をしながら、その子が好きな話題について話しながら、笑い、楽しい時間を共有し、ふとしたときに、学校の情報を面白おかしく話す。基本は楽しくです。

その子どもが、教師と話すことを、会うことを、楽しみに思ってくれなければ、「うちの子が会いたくないと言っています。」と保護者から言われることになりかねません。

そして、これは学校側の取り決めにも左右されますが、ずっと家にこもりきりの場合は、時には外に連れ出してみてもよいでしょう。公園まで散歩する。コンビニげ買い物へ行く。そのようなちょっとした外出でOKです。

そうやって、外の世界(社会)に対する不安を軽減していくのです。中には、学級の子どもたちに頼んで、たまたまコンビニに居合わせた設定で、お互いに挨拶を交わすといったことをやっている教師もいます。

学校への不安、教師への不安、友達への不安、そのような不安を、情報提供や「実際に会ってみて大丈夫そうだ」と思う経験から、徐々に軽減させていくのです。

目標設定とスケジューリング

段々と学校へ行くことに心が傾き始めてきたら、目標を設定しておくことは、とても大切です。「〇月までに教室で授業を受けることができるようにする」「〇月までに1日中教室にいる日を週3日つくる」といった具体的な数を入れた目標です。

これらの目標は、本人の気持ち支援があるからこそ、意味をもちます。不登校から回復した先に、実現したい未来があるからこそ、意欲的になるのです。誰かの強制ではなく、です。

そして、当然、目標は本人に決めさせます。もちろん、過去に不登校児が回復したステップなどの参考例を出しながらです。前例を元に、本人に考えてもらいます。目標は、自己決定し、合意を得たものでなければ作用しないからです。

目標が決まったら、達成までのスモールステップを一緒に考えます。「〇月までに、学校の敷地内に1歩入る」「〇月に保健室登校をする」「〇月に教室で1時間授業を受ける」といった具合にです。

スモールステップとなる目標は、達成しやすそうなものにすることです。「1歩入る」「1時間受ける」などは、「たったそれだけならできそうだ」と心の負担を軽くすることができますし、それ以上のことを成し遂げた場合は、大人側も大いに褒めることができるからです。

そして、「無理をさせないスケジュール」を大人が意識することも重要です。もし、学校に来ることができるようになっても、週5日来ていては、突然、またエネルギー切れになり、長期に休んでしまうということになりかねません。

大事なのは、「疲れる前に休む」ことです。ですので、慣れてきても、「週1日は休んでよい」「疲れているときは、さらにもう1日休んでもよい」と事前に話しておき、「エネルギーチャージのために休める」という心の安心材料をもたせておく方が、結果的にエネルギー量をそこまで消費せずに済みます。不安へのエネルギーが軽減されるからです。

学校の体制を整える

不登校児へこのような支援を行っているという情報は、学校全体に共有しておく必要があります。

その上で、保健室登校や相談室登校、そして、自習をしているときに、時々見に行ってもらう先生など、学校にある資源を常に使える状態に整えておくのです。

その子どもの境遇や、今、前向きに取り組んでいることを先生方が分かっていれば、「少しでも、その子どもの心の負担を軽くしよう」、「学校に来てよかったと思えるようにしよう」と動いてくれるはずです。

保健室の先生、様子を見てくれる先生の親切な様子を見て、また1つ、学校に対する不安材料が減ります。そして、時には、子どもたちにお願いをして、ばったり会って言葉を交わしたり、挨拶に来てもらったりと、「安心できる友達がたくさんいる」と認識してもらうのです。(もちろん、本人が友達に会うことを拒絶していたら、まだこの段階ではありません。)

そのような、いつでも温かく見れくれる先生がいるという人的環境、本人が一人で過ごすことができる場所もあるといった物的環境を整えた上で、学校へ登校させていきます。

学習面/社会性のサポート

長らく学校を休んでいた場合は、学習の遅れが出ていることがあります。この部分を何のカバーもしなければ、また、不登校に逆戻りということもあり得ます。

本人が、「周囲と別の課題をやっていても気にしない」ということであれば、その子の習熟課題に合った内容を、取り組ませればよいでしょう。全体が他のことをやっていたとしても、です。

逆に、「周囲と同じことをやりたい」ということであれば、予習が必要になります。前日の晩に、内容の予習+必要な既習事項のおさらいをした上で、授業に取り組ませるのです。

児童の家庭で協力者がいれば、その人でよいと思いますが、いなければ、無理のない範囲で、教師が教えるという選択肢も1つの手段となります。

そのような様々な諸条件を含めて、本人と相談して決めることが大切です。

また、「雑談が苦手」という児童の社会性をサポートする必要があります。そもそも、自閉傾向がある子どもは雑談が苦手ですし、長らく学校に来ていなければ、話題についていくことも難しいでしょう。

雑談が最も必要とされるときは、給食です。

「全員前を向いて食べる」「同じ班の子どもに、話題を振るようにお願いしておく」「教師が間に入りながら過ごす」など、様々な手段を用意しておき、その子どもの特性・性格と、周囲の様子を見て、判断していく必要があります。

そのような日常生活面をサポートしていきつつ、たまに、教師と一対一で話す時間が設けられていると、さらに、安心して学校生活を送ることができるでしょう。

活用できる社会的資源

不登校への支援方法が分かったとしても、学校、家庭がどれだけ協力体制をつくることができるかは、それぞれの家庭や学校事情によります。協力が得られなくても、社会的資源を頼ることで、支援体制を強化できます。

ここでは、不登校支援で活用できる資源を伝えていきます。

スクールカウンセラー

現代は、各学校にスクールカウンセラーがいるようになっています。担任の先生に相談しずらくとも、クラスに直接関わりのない第三者のカウンセラーになら話せるということがあるからです。

「自分の悩みを聞いてくれる人がいる」ということが何よりも支えになります。自分の心の中に溜まっている、不安、焦り、憤りなどの負の感情を吐き出す相手がいることによって、精神の安定をはかれます。

そこから、「本当はどうしていきたいのか」という未来について話すチャンスが生まれるはずです。

スクールカウンセラーは、学校に問い合わせれば、お願いすることができるはずですので、一度、ご自身の学校に聞いてみてください。

県/市の教育機関

子どもが通学している学校と連携がうまくできなくても、県や市の教育相談窓口を活用することは可能です。

「子どもの発達の凸凹について相談したい」「自分の子どもが学校でいじめにあっているかもしれない」といった、学校に相談しにくい内容を伝える窓口があります。そこから、相談内容によって、心理検査を行う施設を紹介されたり、学校に調査をする「子ども応援委員会」「カウンセラー」などの外部の職員が動いてくれたりするのです。

そのような相談窓口は、学校で配付されるたよりの中に入っている可能性が高いので、相談の心理的ハードルは比較的低いと思います。

心療内科

メンタルクリニックを活用することも大切です。子どもの心理状態をみてもらうことで、実は、発達障害の特性をもっているが故に、二次障害として不登校になっていると判明することもあります。

また、子どものことを心配して、親自身が心理的に負担を抱えているケースも少なくありません。

ドクターからの指示があることや、いざとなればドクターに相談できるといった状況は、心理的な負荷を軽くしてくれます。

フリースクール

そもそも、学校というシステムが合わないという場合は、このような資源を活用することも一つです。

「公立学校は合わないけれど、人とは接したいし、成長もしたいから、別の学校に行く。」このような判断がベターです。それは、主体的な理由を見てとれるからです。

親が心配になって、フリースクールに通わせ、そのままそこが居場所になるというケースもあります。ただ、やはり、子どもの意見はしっかりと聞き、「この先の人生をどう生きたいのか」を話し合った上で、決めることが大切だと思います。

不登校支援センター

全国規模に展開されている一般社団法人の組織です。日本最大規模の臨床データを保有し、不登校に関して専門的な支援スキルをもっている大人が具体的なサポートを提供してくれます。

カウンセリング、学業支援、発達支援など、あらゆる不登校の種類に対する支援が充実しています。医療機関につなげる役目も果たしてくれますので、まずは行ってみて、悩みを相談してみるといいと思います。

不登校に限らず、地域には、様々な社会福祉サービスが存在します。今回あげた機関に相談をして、活用できる資源を教えてもらうこともできるので、まずは、一歩を踏み出してもらえればと思います。

まとめ

アルフレッド・アドラーの考えを基にしたアドラー心理学は、別名で「勇気の心理学」と呼ばれます。

人は勇気があれば困難を克服しようと、努力や学習、協調など「有益」な行動を選択し、勇気が欠乏すると、困難から逃げ出して、より安易な道、他者への攻撃や他者のせいにする言い訳、さらには人間関係や困難からの逃避など、「無益」な行動を選択する。

その勇気を生み出すのは、「自分には能力がある」「自分には価値がある」と思えた経験なのです。

だからこそ、子どもの些細な行動に感謝し、自己有用感を与えることが大切です。「〇〇の力があるね」と声を掛け、その子どもに本来ある力を信じるです

長所に注目し、信頼を示し、貢献に感謝し、努力や進歩に注目する。そして、喜び、悲しみを共有し、ただ、ただ、寄り添う。

上記のような、心構えで、是非、接してほしいと思います。

子どもは、自身に起こる問題を解決する達人です。その子どもが、本来もっている「生きる力」を、信じ抜いてほしい。そう、思っています。

他にも、自己肯定感に関する記事も掲載しているので、そちらの方もご覧ください。記事の内容が「よかった」「ためになった」と思われた方は、SNS等にシェアしてくださるとうれしいです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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