大人の自己肯定感(セルフエスティーム)を上げる方法を徹底解説!一番の鍵は〇〇との関係性

家庭教育のすすめ

「自己肯定感」という言葉が近年多く聞かれるようになり、当たり前の考えとして社会に浸透するようになりました。

一方で、「自己肯定感は、自分のことを好きな感覚」というザックリとした捉え方をしている人が、多い印象があります。しかし、自己肯定感は、人生そのものとも捉えることができ、このテーマだけで、10時間以上講座をすることができるほど、深淵な内容なのです。

この記事では、「自己肯定感の高低によって生じる、人生への影響」「自己肯定感とはそもそも何なのか」「大人の自己肯定感を回復させる方法」を解説していきます。

筆者自身が、様々なワークや、認知の歪みを修正し、自己肯定感を向上させてきた経験を元に、書き記していきます。

これを知れば、生きることが楽になり、気負いしないありのままの自分になれるはずです。そして、パートナーや子ども、友人に、必ず、良い影響を与えることができるようになります。

自己肯定感(セルフエスティーム)の理解

そもそも「自己肯定感」って何?

自己肯定感とは、「ありのままの自分を受け入れて、その自分を大切に思うこと」を意味します。自己肯定感という土台がしっかりしている人は、自分の欠点も受け入れつつ、「でも私にはこのような長所がある。」と前向きに捉えることができます。

自己肯定感が高いと、幸福な人生を実現していく力が高まります。低ければ、当然その力は小さくなります。

自己肯定感の高低で、どのような影響が出るのかを具体的に見てみましょう。

自己肯定感が高いとどうなるか

自己肯定感が高い場合、以下のような行動パターンや思考、特徴をもつことができます。

  • 安心感がある状態がベースとなる
  • 自分のことを信頼することができ、他人も信頼することができる
  • 何事にも、自然に意欲が湧いてくる
  • 人と比べず、自分で自分を評価できる
  • 物事を肯定的に受け止める・解釈することができる
  • 自分の人生は自分で決めている感覚がある
  • 主体性が高い
  • 人と比べない
  • 人をジャッジしない
  • 自分で自分のことを満たすことができる
  • 生きるのが楽

ナルシズム(ナルシスト)との違いは、「評価軸が自分にある」ということです。ナルシズムは評価軸が外にあります。

自己肯定感が低いとどうなるか

自己肯定感が低い場合は、以下のような行動パターンや思考、特徴をもつことが多くなります。

  • 不安や恐れを抱きやすい
  • 自信がない
  • 物事を否定的に捉えやすい
  • 人と比べる
  • 他人の評価で自分を判断する
  • 人に対して批判的な傾向がある
  • 自分で自分を満たすことができない
  • 罪悪感をもちやすい
  • 疲れやすい
  • 自分の人生は他人に決められている感覚がある
  • 主体性が低い

もちろん、全て当てはまる場合もありますし、一部当てはまる場合もあります。

もし、当てはまっていても、大きくショックを受ける必要はありません。誰しも、どれかは当てはまるところがあったりしますし、この記事の後半には、自己肯定感を向上させるステップを載せるからです。伸びしろがあると捉えることもできます。

自己効力感やレジリエンスとの関係性

自己肯定感と似た言葉や概念に、「自己効力感(セルフエフィカシー)」「レジリエンス(精神的回復力)」「セルフイメージ」といったものがあります。それぞれの違いを簡単に説明すると、以下のようになります。

セルフエフィカシー(自己効力感)・・・自分なら人の役に立てるという感覚

レジリエンス(精神的回復力)・・・困難な状況でも自分なら乗り越えていくことができるという心の耐久力

セルフイメージ・・・「自分はこのような人間だ」という自分に抱いているイメージ

これらの言葉・概念と、自己肯定感(セルフエスティーム)は上下関係にあります。

まず、自分のありのままを受け入れて大切に思う自己肯定感がしっかりしていると、常にリラックスして、安心感を抱いている状態になります。自分を信じ、相手を信じ、信頼関係を結ぶことができるのです。

やがて、信頼関係を様々な人と結び、受け入れられていく経験を積んでいくと、「人の役に立ちたい」と思うようになります。自己肯定感が高ければ、自分の力を信じ、存分に力を発揮することができますから、人の役に立つ成功体験を積むことができるでしょう。

このようにして、自己効力感(セルフエフィカシー)が高まっていきます。

自己効力感が高まってくると、「自分ならできる」「自分は必要な存在だ」というエネルギーが高まり、意欲や主体性が引き出されます。学力や社会性を向上させ、さらに成功体験を積んでいくのです。

その中には、つまずきながらも、やり遂げる成功体験が生まれてくるはずです。すると、「例え、途中で困難なことがあっても、最終的には自分はやり遂げることができる」という自信が育まれていきます。これがレジリエンスです。

レジリエンスが高まると、ちょっとやそっとのことじゃへこたれなくなるので、自分が思い描いた通りにやり遂げ、さらに成功体験を積み重ねることができるのです。

そして、その積み重ねが、「何があっても大丈夫な自分」「自分が思い描いたことをやり遂げられる自分」という自己像を確固たるものにしていきます。結果、揺るぎないセルフイメージを手にすることができるのです。

存在価値は何ものにも左右されない

自己肯定感が不安定な人の場合、自分の存在価値が何かに左右されていることがあります。

それは「才能」であったり、「能力」であったり、「行動」であったり、「成果」であったりします。

分かりやすいのは、「勉強」や「仕事」「容姿」などでしょうか。「テストの点数が低い自分は価値のない人間だ」「仕事ができない自分は価値がない」「容姿が優れていない自分は誰にも必要とされない」。そのような存在価値と他の要素をイコールで結び付けてしまっている状態です。

自己肯定感の土台がしっかりと築かれていれば、「自分の存在は何ものにも影響を受けない、唯一のものだ」という感覚をもっています。

そうでなければ、例え、仕事ができたとしても、少しの失敗で自分の自信が揺らいでしまったり、必要以上に落ち込んでしまったりするのです。それは、土台である自己肯定感が揺るぎなく築かれていないからです。

自己肯定感は「心の体幹」

自己肯定感は、車でいえばエンジンのようなものです。

人生は、山あり谷あり。調子がよいときもあれば、悪いときもあります。それでも、エンジンが巨大であれば、急な坂道が現れたとしても、登り切ることができるでしょう。

つまり、自己肯定感の高さは、人生において実現できるものの大きさを規定するのです。「人間関係」「仕事」「健康」「自己実現」などです。

だからこそ、自己肯定感は、「心の体幹」と呼ばれます。人生の柱となるものなのです。

セルフエスティーム形成の段階と自己信頼

自己肯定感は、まずは、養育者から無条件の愛情を注がれることから始まります。

子育てには、命を授かってから、成長していくまでの中で、様々大変なことがあります。夜泣きや、忙しい中、子どものペースに合わせること、思わずイラっとしてしまうような試し行動、などなどです。

しかし、どのような行動をしようとも、常に愛情を注がれ続ける中で、安心感が芽生えていきます。

養育者が、赤ちゃんがこの世に誕生して初めて築く人間関係。その養育者に、常に愛情を注ぎ続けられれば、その養育者と極めて良好な人間関係を築くことができます。人間関係とは「心地よい」「満たされるもの」というスタートラインから人生が始まるのです。

常に愛されていれば、「自分は愛されるべき存在なのだ」ということを無意識に感じ取っていきます。そして、養育者が信じてくれているのですから、自然と自分を信じるようになります。これが、自己信頼につながります。

「自己を肯定している」ということは、「自己を信頼している」ということです。自己を信頼しているからこそ、友達や周りの大人を信頼することができます。

誰だって、自分のことを信頼してくれる人に悪い感情は抱きません。だから、友達や周りの大人からも、好意を寄せられ、信頼が返ってきます。そして、お互いに信頼し合う人間関係を築くことができるのです。

そのような感覚で過ごしていると、「人と人は信頼し合える」ということを、体験として学んでいきます。するとますます人への信頼は増していきますし、相手からも信頼が返ってきます。信頼関係を結ぶことが当たり前となる大人へと成長していくのです。

また、「今の自分に満足している」という満ち足りた状態であるからこそ、周囲の人々に幸せやよろこびを分け与えようとします。人に与えようとする人間の元には、感謝や愛情が集まります。結果的にその人の周りに起こる現象は、ほとんどが幸せで、満ち足りたものになっていくのです。

逆に、「自分に満足していない」状態だと、不満を抱きやすくなります。人の成功を妬んだり、相手より上に立とうとマウントをとったりします。誰だってそんな人の周りには近づきたくありません。すると、人が離れ、「どうして私ばっかり・・・」と不満を抱き・・・という負のループに陥っていくのです。

このような自己肯定感、自己信頼を築く過程をスキップして、「しつけ」や「勉強」を優先して教えてしまうと、人間関係だけではなく、あらゆる面で、不安定な状態になっていきます。

向上心は2つある

「向上心がある」という言葉は、褒め言葉と受け取られがちですが、それは、半分、危ういものです。

向上心は「プラスの向上心」と「マイナスの向上心」があり、「マイナスの向上心」は、むしろ、本人に悪影響を与える可能性があります。

自己肯定感が高い人は、プラスの向上心を持っています。プラスの向上心は、本当に自分がやりたいことを自分で選択し、楽しんで達成し、自己成長をさせてくれます。

逆に、マイナスの向上心は、そもそも「不安」や「恐れ」という自己否定から始まっているので、必要以上のモチベーションを抱かせ、自分の気持ちを無視し、無理強いをさせてしまいがちになります。自己肯定感が低いと、マイナスの向上心を持ってしまいがちになるのです。

例えば、「自分は、太っている。だからやせなくては・・・」という、自分に欠けているものを探して、それを埋めようとする向上心です。他者からの評価を気にしたモチベーションであることが分かると思います。

この場合、目標を達成しても、さらに不足感を抱いたり、努力しても、それが空回りしてしまったりします。成果を手に入れたとしても、また別の「自分に欠けているところ」を探してしまうのです。

そして、そのような無理を続けた結果、どこかで燃え尽きたり、心がポキッと折れてしまったりするのです。

自己肯定感がしっかりと築かれていなければ、心のコップに穴が空いている状態であり、どれだけ努力して自信を手に入れても、その自信は、少しずつ穴から漏れ、流れていってしまうのです。

社会的自己肯定感と絶対的自己肯定感

大人になると、社会的自己肯定感と絶対的自己肯定感の2つに分けて考えると分かりやすいかもしれません。

絶対的自己肯定感は、生まれてから無条件の愛情を注がれて築いた、自己肯定感の土台です。

社会的自己肯定感は、社会にどれだけ受け入れられているのか、役立っているのかを計る、自己肯定感と言えます。仕事の成果、職場やプライベートの人間関係、などなどです。

当然ながら、絶対的自己肯定感も、社会的自己肯定感も、両方高いのが最強です。ただ、社会的自己肯定感が低くても、絶対的自己肯定感があれば、土台がしっかりしているので、いずれ、社会的自己肯定感も上昇していきます。

両方とも低い場合は、周囲に感謝することで、少しずつ、全体的な自己肯定感を上げていくことができるのです。

一番危ういのは、絶対的自己肯定感が低く、社会的自己肯定感が高い場合です。自分自身のことを受容できていないのですが、仕事の成果を残すことができるタイプです。

このようなタイプは、プライドが高く、ミスをすることをとても恐れています。また、仕事でしか自分の存在価値をはかることができないとなると、仕事に依存し、ワーカホリックのようになってしまうのです。

すると、仕事でうまくいかないことが続いた場合、自分の存在価値を全てといっていいほど失います。結果、うつ病、ひきこもりといった、精神疾患を抱えてしまうケースが多々あるのです。

ですので、仕事ができる人でも、プライドが高そうなタイプは要注意なのです。

自己肯定感回復のステップ

ここからは、いよいよ自己肯定感の回復のステップを解説していきます。「向上」ではなく、「回復」としているのは、大人だからです。

子どもは、周囲の大人の働き掛けで、自己肯定感を向上することができます。まだ、自分というアイデンティティーが定まっていないからこそ、変化することができるのです。

一方で、大人は既に、アイデンティティーが確立しているので、外からの働き掛けでは、なかなか変わりません。その場合は、本人の内側から変えていく必要があるのです。

この先は、自己肯定感の回復のステップを「長所・短所の受容」「セルフトークの習慣化」「両親との関係性を癒す」「思い込みの枠を外す/思考パターンの解除」「セルフイメージを高める」の5つに分けて説明していきます。

長所・短所の受容

自己肯定感が低い人は、自分の長所を見つけることが、あまり得意ではなく、短所ばかりにフォーカスしてしまいがちです。

まずは、そのような自分の認知を変えていくところから始めます。具体的には以下の2つのワークです。

◆自分の好きなところ・長所・強味を100個書き出す

◆自分の短所・好きではないところを許可する

「100個って・・・いきなりハードル高すぎ」と思われた方もいるでしょう。これは、何も1日だけで100個見つけるのではありません。1~2週間ほどかけて、じっくり見つけていくのです。

そして、自分でなかなか見つけることができないという人は、周囲の人に聞いても大丈夫です。自分では気づかなかった、他者から見た自分を認知することで、自分という人間の捉え方が少し変わってきます。

「私に長所なんてないです・・・」という方も、100個集まったノートを見てみれば、「案外、私にも長所がある・・・?」と思えるはずです。この自分の凝り固まってしまった認知に、少しずつヒビを入れていくのです。

それと、同時並行に行うのが、短所の受容です。自分の短所、好きではないところを許し、本来ありたい自分に許可を出していきます。以下に例を示します。

欠点や短所と思うところ・・・くよくよしてしまう自分

くよくよしてしまう自分を許します。

本来は、おおらかで、悠然としていたい。

おおらかで、悠然とした自分になることを許可します。

「こんな言葉だけで変わるわけがないじゃないか」と思う方がいるかもしれません。筆者も、最初に試したときは半信半疑でした。

しかし、実際に「書く」という行動に移してみると、心がふっと緩む感覚がありました。これは、まだファーストステップなので、とても軽いワークから始めています。いわゆる助走段階です。

それでも、人によっては、固く、緊張感ある雰囲気をもった人が、とても柔らかい表情と雰囲気になる変化が訪れる場合があります。

今まで、自分に厳しく、厳しくしてきた人ほど、効果があると思ってください。

これから先のワークも、基本的に、「自分を許していく」ことが大前提となります。

セルフトークの習慣化

自己肯定感が低い人は、自分で自分を満たすことができません。

子どものころは、周囲の人間の誰かが褒めてくれたとしても、大人になったら、「仕事をこなすのが当たり前」の社会に所属します。

その上、同僚との人間関係、プライベートでの人間関係がうまくいかなければ、誰もその人のことを満たしてくれません。

だからこそ、自分が自分の味方になり、自分を満たす愛ある言葉を自身に投げかける基礎能力を育てる必要があります。これがセルフトークです。

具体的には、鏡に映る自分に向かって、「いつもよくがんばっているね」「お疲れ様」「大好きだよ」といった言葉を発してみるのです。

最初は、とても抵抗感を示す人がいますが、言葉を発すれば発する度、心が楽になっていきます。そして、自分に愛のある言葉をかける抵抗感も薄まっていくのです。

中には、自分に向かって「大好きだよ」と言葉を掛けると、涙を流してしまう人もいます。

それだけ、誰も自分の味方がいない中、厳しい中、戦ってきた人なのでしょう。

そのような、抵抗感の壁を壊しながら、セルフトークを習慣化するために、記録をとっていきます。1日の終わりに、以下のような項目に対し、その日の気持ちを書き込んでいきます。

①1日の中の自分のがんばりを褒める(自分は自分のサポーター)

②1日1つ自分の好きなところを発見

③許可のワーク(その日意識した自分の短所・欠点に許可を与える)

④自分へのご褒美(1日の終わりにスイーツを買うなど)

このような項目に対して、毎日のように記録を取っていくと、次第に、自分への接し方が変わってきます。

「こんなもの、自分に対して甘すぎじゃないのか」と思う方がいるかもしれません。それでも、これまで、自分に対して厳しく接し続けてきた人は、これぐらい優しく、甘くしていいということを体験しなければ、自分の認知を変えていけないのです。

自己肯定感が高く、愛着も安定している人は、無意識に「自分が自分の味方である」接し方ができています。反省する部分を持ちながらも、バランスよく、自分に無理しないよう優しく、甘くすることもできるのです。

セルフトークは筋トレのようなものです。毎日のように少しずつ積み重ねていけば、やがて安定感ある力となります。基礎筋力を整えた段階で、次のステップに進みます。

両親との関係性を癒す

この「両親との関係性を癒す」ワークが、自己肯定感を回復するための、最も根幹となるステップです。

自己肯定感が低いとされている人は、両親との関係性において、何らかの負の感情を抱いている場合が多いです。その、不満や満たされなかった思いを癒さなければ、自分を受容することは難しくなるでしょう。

なぜなら、自分という存在は、父親と母親という人間が、入り混じって誕生したものだからです。

ここでは、回復のステップを「両親に対してのマイナスの感情を吐き出す」「両親に対しての理解と受容」という2つのステップで解説していきます。

両親に対してのマイナスを吐き出す

まずは、自分の中の奥底にしまっていた、両親に対して抱いている負の感情をさらけ出すところからスタートします。

具体的には、「両親に対して抱いていた思い/されて嫌だったこと」「両親からしてほしかったこと/欲しかった言葉」を考えていきます。

両親に対して抱いていた思い/されて嫌だったこと

まずは、「子どものころ、両親に対してどのような思いをもっていたか」を書き出します。おそらく、負の感情を抱いている人ほとんどの人にとっては、嫌な記憶を呼び起こすことになるでしょう。

筆者が、参加したワークでも、吐き出すことに、とてもためらいを示す方が多くいました。筆者自身も、そうです。

心に非常に深い傷を負っている人にとっては、非常に勇気が必要で、かなりのエネルギーを消費するワークになるかもしれません。人によっては、信頼のおける人がそばにいる中で、行ってもよいワークだと思います。

そして、「両親にされて嫌だったこと」を書き出していきます。

吐き出し切り、一旦、負の感情を空にしなければ、両親に対して思いを馳せる余裕は生まれません。だから、思いつく限り全て書き出すのです。

そのようにして、両親に対しての自分の捉え方を、メタ認知する状態になった上で、次のステップに進みます。

両親からしてほしかったこと/欲しかった言葉

両親への不満や、されて嫌だったことがあったということは、「本当ならばこうしてほしかった」という理想があると思います。今度は、それらを書き出して、再認識していくのです。

「もっと遊んでほしかった」「褒めてほしかった」「抱きしめてほしかった」「自分を信じて自分に任せてほしかった」「愛のある言葉をかけてほしかった」。様々あると思います。

加えて、具体的にかけてほしかった言葉も書き出していくのです。「あなたがいるだけで、幸せ」「勉強ができようとできまいと、あなたの大切さは変わらないよ」「あなたのことを信じているよ」などの言葉を、例えとしておきます。

そして、そのような環境の中で、生きてきた自分を労ってあげてください。そのような言葉も書き出すことが大切です。「色々と満たされない思いがある中、よくここまでがんばってきたね」のようにです。

ここまできて、ようやく、両親のことに対して受容をする心の状態が整います。整った時点で、次のステップです。

両親に対しての理解と受容

仮に、子どもに対して愛ある言葉を掛けることができず、否定ばかりしてしまう親がいたとします。その親は、なぜそうなってしまったのでしょうか。

人間は、自分が体験して身に付いている習慣を、無意識に繰り返してしまいます。ということは、おそらく、そのような親は、自分の親に、同じような教育や言葉掛けをされて育ってきた可能性が高いのです。

加えて、親が初めて子どもを産んだときは、20代、30代であった場合が多いと思います。自分が大人になったからこそ分かるのは、「20代、30代のときの大人は、まだまだ未熟なところがたくさんある」ということです。

その上、子育てという未知の領域を、手探りで、悩みながら、進めていた可能性が高いのです。年齢が20代、30代でも、親年齢は0歳からのスタートなのです。

そのような親の状況への想像力を働かせて、親の未熟性を知るところから、「親の理解」を深めていきます。その上で、両親との関係性を以下のステップで癒していきます。

①これまで両親にしてもらったことを書き出す

②両親に迷惑を掛けたことを書き出す

③両親にしてあげたことを書き出す

④両親はどのような環境の中であなたを育ててくれたかを書き出す

⑤両親はどんな環境で育ったかを想像して書き出す

⑥あなたが子どものときの父親と母親に、今のあなたならどんな言葉を掛けてあげたいかと書き出す

親のことだけでなく、そのまた親のことまで想像しながら、書き出していきます。教育の在り方は後天的に遺伝・連鎖するからこそ、両親も満たされない思いを抱えた幼少期を過ごした可能性が高いからです。

その上で、大人になって、様々つらい思いをした今の自分だからこそ、掛けてあげることができる言葉を両親に掛けてあげるのです。(ワークとして紙に書き出す)

最も強力な方法は、手紙を書いて両親に渡すというものでしょう。「自分はどんな満たされない思いをもっていたか」「本当はどうしてほしかったか」、一方で「感謝していることは何か」「両親のつらかった環境に対しての理解」などを書き連ねるのです。

筆者は、実際に手紙を書いて、渡したことがあります。面と向かってはなかなか抵抗があったので、実家に帰ったときに、机の上に手紙を置き、そのまま帰りました。

後々、手紙を読んだ両親から長文のメールが届きました。それから3~4年ほど経ちますが、両親に対してのわだかまりや責任転嫁をする気持ちは一切なくなりました。

このように、「両親の良い所も悪い所も受け継いで、今の自分ができている」「両親の愛を理解しているし、今の自分に満足して生きていく」という、真の意味での受容が生まれると、自分の中に安心感が生まれます。

すると、次のステップに必要となる、自分を苦しめている認知の歪みや、思考パターンを解除することができるようになるのです。

思い込みの枠を外す/思考パターンの解除

このステップでは、まず、自分の思考パターンを把握し、修正・手放すという流れになります。一つ一つ見ていきます。

自分の思考パターンを把握する

認知行動療法という治療方法があります。ここのステップでは、その療法の一端を使用します。

人には認知の歪みというものがあります。自己肯定感が低い人であるほど、この認知の歪みを持っている可能性が高いです。例えば、以下のような特徴です。

「白黒思考」・・・物事を白か黒かで割り切り、完璧を求めさせる。

「すべき思考」・・・自分や他者に対して「〇〇すべき」「〇〇しなければならない」と考える傾向がある。

「自分への関連付け」・・・よくない出来事が起きると、自分には本来関係がないのに、自分のせいだと考えてしまう。

「過大評価と過小評価」・・・他人の良い所は拡大して捉えるが、自分の長所はミクロにしか捉えられず、短所に注目してしまう。

「一般化のしすぎ」・・・わずがな出来事を根拠に、あらゆる出来事が同じような結果になると一般化しすぎる傾向。

「根拠のない推論」・・・根拠もないのに、悲観的な思いつきを信じ込んでしまう。

上記のような認知の特徴は、1つもっている場合もあるし、複数もっている場合もあります。

自分が負の感情を抱いた度に、記録用紙に書き出していきます。そして、その負の感情を抱いた思考の背景を探ることによって、自分が持っている認知の特徴をつかんでいくのです。

①負の感情を抱いた出来事は何か

②その時に感じた感情

③感情の理由

④どの思考パターンに当てはまるか

⑤根拠となる事実はあるか

⑥例外的な事実から⑤の事実を捉え直す

⑦ ②で書き出した感情はどのように変化したか

⑧自分にかけてあげたい言葉

要するに、本当にあった事実だけにフォーカスし、認知の歪みによって生み出している想像上の事実と区別をつけていくのです。

そして、自分の心に、負の感情を必要以上に抱かせている原因となる、思考パターンを見極めていきます。

このようなワークを、感情が揺さぶられた出来事の度に行っていれば、10枚、20枚と書き出したものが溜まっていきことになります。

すると、認知の歪みや、その奥にある自分の価値観すら見えてくるのです。そうなったら、いよいよ「手放す」段階に入ります。

修正・手放す

修正・手放す段階で大切なのは、認知の歪みや価値観によって苦しめられてきた自分への言葉掛けと、それらをもっていることによって、成長できたり、自分を守ることができたりした面に感謝をすることです。

自分の感情を理解し、且つ、感謝をすることで、尾ひれを引くことなく、別れることができます。

具体的には、「ネガティブな考えの修正」と「嫌な気分にさせる価値観の手放し」というワークを行っていきます。

ネガティブな考えの修正

ここでは自分をこれまで苦しめてきたネガティブな考え(認知の歪み)を修正します。

①これまで自分を苦しめたネガティブな考え(認知の歪み)を書き出す

②その思考パターンをもちながら生きてきた自分への労いの言葉掛けをする

③思考パターンをもつことによって得た恩恵にも着目し、感謝する

④思考パターンに別れを告げる

例えば、「すべき思考」によって、「周りの空気を読むべき」と捉えてきたとします。それは、空気を読むことによって、集団の中で自分が浮かないよう、人に白い目で見られないように、自分を守ってきた役目を担っていた可能性があります。

だから、その面に感謝するのです。

「これまでは、空気を読むべきという考えで、周りと協力することや、周囲を見て人の気持ちを察することを自分に課して、自分を成長させたり、周りから守ってくれたりしてくれたんだよね。お陰で、ここまで生きてこれたし、周囲と協力する沢山のことを学べたよ。ありがとう。そのことは十分に学んだから、だからもういいよ。私は、これからは、周囲の様子+自分の思いを大事に生きていくね。」

といった感じです。感謝して、手放すのです。これを、自分の思考パターンごとにやっていきます。

1日に全てやるのではなく、自分の感情が揺さぶられた度に、消化していくイメージです。1か月ほどの中で、ふっと感情が浮かび上がった度にやっていけば、自分の認知の歪みを、大分、修正できるかと思います。

嫌な気分にさせる価値観の手放し

嫌な気分にさせる価値観とは、例えば、「頼まれた仕事は断ってはいけない」といった価値観です。

これは筆者の実体験ですが、読んだ本や、尊敬している人の言葉に「頼まれた仕事は断ってはいけない」というものがありました。好き嫌いをせずに、仕事をこなす内に力は付いていくものだという意味合いで語られていたと思います。

筆者はその言葉を信じ、選り好みをせずに仕事をこなしていたのですが、断らないので、仕事がどんどん積み重なっていき、ついに、キャパオーバーになってしまいました。

自分の心身の健康のために、仕事を断る必要が出てくるのですが、この言葉が胸の中にあるので、断る度に胸が痛むのです。このような価値観、信念をここでは手放していきます。

手順は、「ネガティブな考えを修正する」時と同じです。書き出す→労う→感謝→別れを告げるの順番です。ここでは、筆者が実際に書いた、簡単な例文を紹介しておきます。

「頼まれた仕事は断ってはいけない。」そう、自分に課すことで、初めてで躊躇する仕事、少し苦手だなぁと思う仕事でもできるように自分を支えてきたんだよね。そのお陰で、本当の自分のやりたい仕事が見えてきたり、苦手なことも努力すればある程度のレベルまでいける方法があると分かったりしてきたから、もういいよ。今まで苦しかったかもしれないけれど、よくがんばってきたね。これからは、成長に必要な仕事や自分のやりたい仕事を選んでいいよ。

一番最後の一文だけは、「新しい価値観に書き換える」ということをしています。

このように、自分を助けてきた一面もあるけれども、苦しさを生み出している一面もある価値観、信念を1つ1つ書き換えていくのです。

これを全て終えると、自分の中にあるわだかまりや苦しさというものがなくなります。呪縛が解き放たれる感じです。

この段階まで来ると、「生きることが楽になってきたな」と感じるようになります。そうなったら、いよいよ最終段階です。

セルフイメージを高める

最後は、自分のセルフイメージを高めるワークです。

今までは、過去や現在に対してベクトルを向けて、自分と向き合ってきました。ここからは、未来について考えていきます。

セルフイメージを再構築するためのステップは以下のようになります。

①今までのセルフイメージを書き出す(プラス・マイナス両方)

②マイナスのセルフイメージに対して許可を与え書き換える

③なりたい自分(新しいセルフイメージ)を書き出す

④今までの古いセルフイメージに別れを告げ、新しいセルフイメージを宣言する

セルフイメージの中で、「なりたい自分になることを妨げていたマイナスのセルフイメージ」というものがあります。それを手放した上で、新しいセルフイメージをつくることが大切です。

例えば、「人間関係が苦手」であれば、「人間関係をつくることが好きになりたい」「人間関係をつくることを好きになってもいい」と、自分の本音+自分への許可を書いていきます。

そして、なりたい自分という目標を設定し、最後は、手紙という形で感謝と労いを込めて、今までのセルフイメージに別れを告げるのです。

きっと、そのセルフイメージたちは、どこかで、何かしらの危険や避けたい状況から、あなたを守ってきてくれたはずですから。

まとめ

人間の深層心理というものは、深淵です。自己肯定感についてのこの記事は、主要な部分を筆者なりに抽出したものであり、実際にステップは、さらに多様、複雑になるものも多いです。

これだけのワークをやるのですから、かなりの決意とエネルギーが要求されます。

自分の自己肯定感に関して何かしら思うことがあったとしても、これを読んで、「まだここまでやらなくていいかな」と思う人は、今が来るべき時ではないのでしょう。逆に、「今すぐにでも」と思う人は、きっと今が、一歩を踏み出す、その時なのだと思います。

今すぐに行動しなくとも、知識として知っているということも大切です。いつか、本当に必要となったとき、「そういえば、このような方法があったな」と、思い出し、前に進む機会を得ることができると思います。

自己肯定感回復のステップは、とても時間がかかるものです。ワークをして、すぐに効果が得られるものではありません。

ワークを終えて、2年、3年と月日が経つうちに、いつの間にか、自分の自尊心を自分で下げることがなくなり、両親に対してのわだかまりが消え、誰に対しても、愛情をもって接することができる自分に気付くようになっています。

誰の人目も気にすることなく、自分の意思を何よりも尊重して、楽しく、心を楽にして、人生を生きていくことができるようになります。

まだまだ、この先何十年と、「自分」という人生を生きていくのならば、自己肯定感を回復することは、早ければ早いほど、後々のリターンがあります。

『アダルト・チルドレン癒しのワークブック』(西尾和美著)のように、そのまま書き込めるワークになっている本も出ているので、試してみてください。

みなさんの人生が、今より楽に、そして充実したものになることを願って。

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