国語は宝さがし!!国語の成績・思考力が急激にアップする、元教師が解説する詩歌の教え方

教え方のコツ

筆者は元小学校教師。10年間で様々な学年を経験し、様々な教材を授業してきました。

筆者の大学時代の専門は国語なのですが、最近は子どもの「国語離れ」の傾向が強く現れてきているように思います。動画を見るようになり、活字に触れる機会が減ったことが大きな要因でしょう。

ただ、そんな子どもたちも、筆者が1年間教えていく中で、国語の面白さに目覚めていった人が、1人、また1人と増えていきました。

中でも、短い時間で、且つ、劇的な国語の面白さを味わることができる詩歌の授業が大好きでした。たった1行の詩について、原稿用紙25枚もの分析作文を書いた子どももいたぐらいです。

今回は、そのような詩歌の教え方を紹介していきます。これを知れば、今よりも一歩国語が好きになること間違いなしです。

国語は「宝さがし」と「謎解き」!!トレジャーハンター・名探偵になって読み解こう!

筆者はよく、国語(特に詩歌)の勉強を、「宝探し」や「謎解き」に例えます。国語の教科書に載っている作家や作者は言葉のプロです。言葉をどう使うかでお金を稼いでいる人たちです。

俳句でいえば、わずか17音の文字を何日も考え続け、「これしかあり得ない」という組み立て、順番、表記、響き、リズムで作品に仕上げます。

だからこそ、一見何のことか分からない詩であったとしても、そこには「作者の隠された意図や思い・願い」が隠されています。巧みな言葉の鎖で、何重にもプロテクトをかけてあるのです。

その謎を1つ1つ読み解いて、最後に、作者が埋め込んだ「宝」にたどり着くのです。どうですか?なんだか聞いていてワクワクしてきませんか?

ではここからは、筆者が行った実際の授業を紹介します。教科書教材である、「素朴な琴」という八木重吉の作品です。

「素朴な琴」八木重吉の授業の実際

一見すると、ただ、琴が置いてある秋の美しさを表現した詩であるかのように思えます。しかし細かく注目していくと、さらに奥の世界へと続く扉が開かれていくのです。

授業は、思考を促す質問である「発問」を中心として組み立てられていきます。ここからは発問を中心とした授業形式で流れを書いていきます。

①題名は何ですか。

②作者は誰ですか。

まずは、誰でも分かるところから始め、授業の離脱者をカバーします。そして、少しずつ、メインテーマに近づく発問を入れていきます。

「話者」とは、この詩の語り手のこと。この詩を見ている人には、何が見えているのか。

「あかるさ」「琴」「素朴な琴」「秋の美しさ」などがあげられます。このように自由気ままに思ったことをまず表出させるのです。そして、意見を交流させます。

ここでの最大の論点は「琴は見えているのか」ということです。多くの場合、「見えていない」と主張する子どもが数人出てきます。なぜなら、「~ば」という仮定の形で書かれているからです。

もし全員「見えている」となっても、「では、全員一致で100%、いや1000%絶対見えているということでいいですね?」と言えば、必ず反対意見が出てきます笑

ここでは、結論を出さず、保留にして先に進みます。

これは、「聞こえていない」となるでしょう。「おくならば、鳴るであろう」という予測の段階であるためです。このように理由を述べさせ、文中の言葉に注目させます。これが国語です。

これは、思い思いに考えさせます。この発問が、後半の展開に意味を持つようになるからです。

「耐へかねて」を丸で囲みます。

詩というものは、何重にも構造的に考え抜かれて、「絶対にこの言葉でなくてはならない」というものが使われています。「耐える」という言葉は、「苦痛に耐える」「辛さに耐える」のようにマイナスのイメージをもつ言葉です。しかし、この詩では、「美しさに耐へかねて」となっています。ここに違和感を感じます。

このような場合は、別の言葉に置き換えて、「なぜこの言葉でなくてはならなかったのか」を考えさせる発問をしていきます。

この発問は難しいので、意見はあまり出ないかもしれませんが、違和感を持たせることが大事です。

詩には、作者の作品の傾向が現れます。そこで、八木重吉の他の作品を持ってくるのです。

「吐く」「肉をみせるように」「つめたくなり」「死ぬまい」といった言葉から暗い詩だということが分かります。

八木重吉の詩を制作した時代ごとに並べると、死期が近づいていく内に、詩の内容が「終わり」を連想させるものに偏ってきている傾向に気付きます。その教師しか持ちえない情報を子どもたちに共有するのです。

自分の死期を悟ったからこそ、「今ある命の有難み」や、「生のすばらしさ」を強く感じていたのでしょうか。

ここで、中盤の発問に再び戻ってきます。そして、中盤の時とは、詩の見え方が変わっているはずです。これが「あれども見えず」を発見させる詩歌の授業。まさしく謎解きです。どうですか?ワクワクしませんか?

ちなみに皆さんは、美しい音、かなしい音、どちらだと考えますか。

このような詩歌の教え方は、たくさんのバックグラウンドがなくてもできます。筆者の学級では、1年間の終わり、つまり3学期には、子どもたちが、自分自身で発問を考えて、子どもたちの発問で授業が進むようになっていました。

次の章では、誰でも、宝探し名人になれる方法を解説していきます。

詩歌の分析を子ども自身に行わせるやり方

詩歌を深く分析・謎解きするためには、「視点」が必要です。つまり、教師と同じように「発問を考える視点」を教える必要があります。

まずは、ある年の5年生、3学期の授業で出てきた、子どもたちの考えた発問をあげておきます。題材は、教科書教材の「ふるさと」室生犀星です。

みなさんは、この詩を目にして、どのような発問を考えますか。子どもたちが考えた発問は以下です。

  • 「つつしむ」は漢字に直すと「謹む」か「慎む」か。
  • なぜこの詩の題名が「ふるさと」なのか。
  • 木の芽は一つか。それとも複数か。
  • 「もえよ」はなぜひらがななのか。
  • 一行目の「とけ」はひらがなだが、二行目の「とけ」は漢字になっている。なぜか。
  • 何が見えているか。
  • 「もえよ 木の芽のうすみどり」を2回繰り返しているのはなぜか。
  • 季節はいつか。
  • 話者がいるのは家の中か。外か。
  • あたたかいか。さむいか。
  • 木の芽がもえているとはどういうことか。
  • 雪はふっているか。
  • 人間はいるか。
  • 雪は積もっているか。積もっていないか。
  • 「ひとり」とはだれのことか。
  • この詩は明るい詩か。暗い詩か。

1つ1つをじっくり見ていくと、どれ1つとして、簡単に確定することができず、且つ、詩の内容に大きく関わっている発問であることが分かると思います。

なぜ、このような発問が出てくるのか。それは、1年間の中で、詩の主題(作者の伝えたい思い・テーマ)を見抜く視点を養ってきているからです。

子ども自身が発問を考えるステップ

子ども自身が、自ら発問を考えるようになるには、以下のステップを踏みます。

①発問一覧表を年度始めに渡す

②面白い良質な詩歌の授業を教師が主導で行う

③詩歌の授業を行う度に、出てきた発問を一覧表から見つけ、チェックさせる

④慣れてきたら、半分教師の発問、半分子どもの発問で授業を進める

⑤子どもの発問のみで授業を進める

大事なのは発問一覧表を手元に持っていることです。これは、様々な詩歌の良質な発問を筆者が抽出し、視点ごとにまとめたものです。

種明かしをしてしまえば、「何だ。これだったら誰でもできるじゃん。」と思う方もいると思います。この「誰でもできる」という思いが大切です。子ども自身も、「これならできるかも」と思うことによって主体的に発問を考えるようになります。

後は、場数をこなし、「良い発問」とは何かを経験していくことにより、詩の主題に迫る発問を選定する視点を育んでいくのです。これができるようになると、詩の分析はかなり楽しくなってきます。

授業の進め方

ただ発問を考えさせただけでは、膨大な量になってしまいますし、何が重要な発問かが分かりません。そこで、授業の進行方法を工夫します。

①ノートに発問を5つ書かせる

②書いた人から教師に見せに来る

③教師は5つの発問の中で、最も詩の主題に近づきそうなものに〇を付ける

④〇を付けた発問を黒板に書かせる

⑤黒板に様々な発問がずらりと並ぶ

⑥たくさんの発問の中から、主題に迫る発問を選ばせ、挙手させる

⑦数の多かったものを5つ程度に絞る

⑧教師が発問の順番を調整し、授業を進める

このような形で授業を進行すると、発問の質がグッと上がります。また、教師が黒板に書かせる発問を調整できるので、あらゆる視点、且つ、知的な面白さを伴う発問をズラリと並べることができます。

当時はまだ、タブレットが導入されていなかったのですが、今だったらタブレットに打ち込ませて共有させてもよいでしょう。その共有された情報を見て、迷って手が止まっている子どもが、安心して進めることができるようになります。

ちなみに、この「ふるさと」では、子どもたちは以下のような意見交流を行っていました。

【発問】「とける」は「解ける」「説ける」「溶ける」「とける」どれがふさわしいか

・「あたたかくとけ」ているのだから、液体になっていることを示しているので、「溶ける」。

・冬が終わり、春になることで自由になっているからこそ「解ける」である。

・「あたたかく」もひらがなであり、この詩のイメージを作者は大事にしているからひらがなのままが良い。

【発問】季節はいつか

・春・・・「うすみどり」が見えているということは、春。

・冬の終わり・・・話者は雪がとけていることをまだ見ている。雪が残っているということは、冬。

・夏・・・「みどり」が見えるということは、夏のはじめ。

・季節は夏。これは、話者がふるさとの冬、もしくは春の風景を思い浮かべている。

【発問】この詩は明るい詩か。暗い詩か。

・木の芽のうすみどりが見えているということは、春の訪れ。だから明るい詩である。

・「ひとり」というのは、孤独というイメージ。だから暗い詩である。

・「つつしむ」を漢字に直すと「慎む」と「謹む」。「慎む」は、「しんちょうに」といった意味であるため、暗いイメージ。一方で「謹む」は、「お祝いごと」を表す。だから明るい詩。

【発問】木の芽が「もえる」とはどのような意味か

「もえる」を漢字に直すと「萌える」と「燃える。」この「もえる」は両方の漢字があてはまる。「萌える」は植物の芽が出てくる意味で使われており、「燃える」は、これから「うすみどり」の芽が、春になって「桜色」に変わることを示している。その色の変化と言う意味で、赤いイメージの「燃える」を使っている。その2つの意味を両方ふくめているからこそ、どちらでも考えることができるひらがなの「もえる」にしてある。

まだまだ他にも面白い意見が生まれていました。さらに、休み時間になっても、あちこちで意見の交流が行われる状況が自然と発生していたのです。

教師が一方的に教え込んだ授業ならばこうはなりません。自分たちで発見した喜びがあるからこそ、あちこちで知的興奮を覚えた子どもたちが、自発的に勉強に関することを話題にするのです。筆者は、これが「主体性」だと思っています。

学年が変わった後も、「先生の授業、めちゃくちゃ面白かった。もう一回受けたい。」と色々な子どもに言われました。子どもは本来、学ぶことを楽しいと思うものなのです。

そして、面白いのは、このような授業を行うと、必ず、「普段なら活躍できない子どもが活躍する」のです。なぜなら、正解がないから。塾で予習していても、自分の頭で考えなければ、意見は生み出せません。失敗を恐れず、一歩を踏み出せる挑戦型の子どもたちが活躍し、皆もそのように育っていきます。

まとめ

国語は全ての教科の中で一番教えることが難しいといわれています。なぜなら、答えが存在しないものが多くあるからです。

一方で、「答えが存在しない=自分で思考する楽しさを味わえる」教科だと筆者は思っています。答えを一つに絞らないからこそ国語は面白く、奥深いのです。

思考力を鍛えるためには、国語の力を伸ばすことが最も効果的です。全ての教科に影響を与える基幹教科といわれる国語。その国語の力を伸ばしたのならば、学習面全般の底上げができるのは、必然でしょう。

まだまだ、国語の魅力は語りつくせません。漢字、作文の教え方、物語の読解、言葉遊びなどなど、様々な国語の魅力を教える方法を伝えていくことができたらと思います。

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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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