この共育LIBRARYには、数多くの効果的な指導法や、知的好奇心をくすぐられ、勉強の魅力を伝えることができる教え方を書き綴っています。
しかし、「効率」のみを求めていては、人間はやがて壁にぶつかります。そんな時に必要なのが、「遊び心」です。
この記事では、筆者の遊び心満載の授業をお見せします。もちろん、「常識」という枠を、大きく打ち崩す斜め上の角度からの授業です笑
さて、読者の皆さんは、国語の教科書にこのようなページがあることをご存知でしょうか。
このようなページは、単元と単元の間に定期的に入るように、教科書の構造上、組み立てられています。前学年の漢字の復習を行わせるのが、教科書の主たるねらいです。
よく見る授業は、これらの漢字を使って短文を作り、「どれだけ漢字を使ったか」を点数化するというものです。そのように「楽しく漢字を使わせる」実践。筆者もやったことがあります。
しかし、今回は、そのような誰でも予想ができるような展開の授業ではありません!
・・・ある日の6年生の授業。
授業が始まるや否や、筆者はある1枚の紙を子どもたちに配りました。このような紙です。
紙を受け取ると、教室が「ざわ・・・ざわ・・・」とざわめき始めます。そう、筆者はまさかの教科書にある漢字を使って、物語を創作したのです。それを子どもたちに「手本」として渡しました。
画像では見づらいと思いますので、この「芸術作品として昇華している」筆者の作文をご覧ください。
歴史ある旧校舎にチャイムの音が鳴り響く。私立羅武(らぶ)学園は、今日もたくさんの生徒たちが生き生きと活動している。その中に、二人はいた。そう。儒利愛(じゅりあ)と脚鎖淋(きゃさりん)だ。二人はこの学園で最も仲が良いと言われるほどの親友同士だ。桜散る入学式の日に、二人は出会った。出会った瞬間から、まるで昔からの友人であるかのように打ちとけた二人。それからも、二人は夢を語り合い、共に飼育係を務め、共に留学も乗りこえてきた。そんな二人の厚い友情は、永久に続くかのように思われた。そう、二人が露美男(ろみお)に出会うまでは・・・。
この学園で露美男を知らない者はいない。この学園の理事長の孫であり、文武両道であり、さわやかな好青年である男子生徒だ。ある日、儒利愛と脚鎖淋はこの露美男に人目ぼれをしてしまったのだ。それも、二人同時に。この日から二人の争いは始まった。
儒利愛「露美男が好きなのは、この私よっ!」
脚鎖淋「何を言っているの!?私なんて今日は三回も露美男と目が合ったのよ?露美男が好きなのはこの私よ!」
露美男「おいおい、君たち。僕のために争わないでくれ・・・。」
そんな日々が続く中のある日の授業。その日の授業のテーマは「愛と恋の違いは何か?」だった。様々な質問が飛び交う中、生徒たちはテーマの答えを記述していった。そして、その授業後・・・
儒利愛「脚鎖淋、あなたの露美男に対する想いは、ただの恋。愛には達していないのよ!」
脚鎖淋「愛までいたってないのは、あなたの方よ、儒利愛!私は露美男を愛している!」
儒利愛「それじゃあ、どっちの方が露美男を愛しているのか、決闘よ!」
脚鎖淋「望むところよ!」
露美男「おいおい、君たち。僕のために争わないでくれ・・・。」
決闘の日程を決めると、二人の準備が始まった。それぞれの技に磨きをかける二人。そう、二人は武道の使い手だったのだ。儒利愛は、ブラジル仕込みのカポエラの使い手。脚鎖淋のタイキックは、その名がタイの国内にとどろいているといわれるほどの実力だ。二人はそれぞれ仲間を集め、チームをつくった。
決闘の日である当日。緊ぱくした空気が流れる。両チームは決闘前から早くも火花を散らしていた。個人戦ではなく団体戦。総力戦だ。戦いが始まった。どちらも引かない攻防戦。気が付くと両チームの得点は二対二。勝負のゆくえは大将である儒利愛と脚鎖淋にたくされた。
「ジュリアーズラブハリケーン!」
「キャサリンかかと落とし!」
それぞれの技が決まる。と、同時に二人とも地面にくずれ落ちた。どちらが先に立ち上がるか・・・。最初に立ち上がったのは、脚鎖淋だった。
儒利愛「私の負けよ、脚鎖淋。露美男はあなたのもの。親友であるあなたにもっていかれるなら、悔しいけど、本望よ。」
救護所に運ばれていく儒利愛。彼女の口から出た本音は、脚鎖淋の心を大きく打った。
脚鎖淋「儒利愛。私が間違っていたわ!愛はうばい合うものではないのよ!分かち合うものだったの!露美男は二人のものよ!」
儒利愛「ああ!脚鎖淋・・・!」
二人は手をとり、見つめ合った。今まで氷のように固くなっていた二人の友情が、また再びよみがえったのだ。
露美男「二人とも、百点満点だ!」
そう言った露美男の目からは、涙が流れていた。美しい涙だった。
いかがでしょうか?この完成度の高いアート作文は・・・!
しかも、お気づきの方もいると思いますが、教科書が指定している熟語や言葉を適度に使いつつ、この味わい深い作品に仕上げているのです。
おまけに、「長く書けているか」「読み手を引きつける内容か」「漢字を使っているか」という、評価観点をしっかり示しています。
この手本を読み上げた後、子どもたちからは、心の声が寄せられました。
「先生、手本でこの作品を見せるのは、クオリティが高すぎます!」
子どもたちには、果敢にチャレンジしてほしかったので、「君たちの挑戦を待っているよ。」と返しながらも、内心では
ふっふっふっ、そうだろう、そうだろう。
と思っていました笑
子どもたちは、かなり構成を練っていましたが、やがて、1人、また2人とクオリティを追究した作品が提出されていったのです。
学生時代、能動的な授業は起きていられるのですが、一方的に教え込む受動的な授業は、ほぼ全て寝てしまっていた筆者です。
自分自身も「楽しい」と思えるような授業ではないと、なかなかやる気にならないのです笑
ちなみに筆者は、「楽しい」授業は、6つの種類に分かれると思っています。
①知的好奇心がくすぐられる授業
②「分かる」「できる」が味わえる授業
③0から作品を作り出す創造性(クリエイティビティ)が発揮できる授業
④笑いがある授業
⑤勝ち負けやチーム戦などのゲーム性がある授業
⑥人との交流を楽しむことができる授業
今回の筆者の授業でいえば、「知的好奇心」「創造性」「笑い」といったところでしょうか。とにかく、常日頃から「どうやったら授業が面白くなるか」を終始考え続け、思いついた暁には、ニヤニヤしながらそれを書き留めているのです。
このような、様々な「楽しい」を心がけた授業を1年間続けていくと、毎年数人が勉強に目覚めるようです。
「先生、家の子が、勉強に目覚めました!」
と懇談会や卒業後に保護者から言われたことが何度かあります。
まあ、あまり笑いに偏り過ぎた勉強法に走られては困りますが・・・笑
今回は、筆者の遊び心満載の授業風景をお伝えしました。まだまだ、筆者の面白エピソードや、知的好奇心をくすぐる教え方や授業などを記事にしていますので、そちらの方もご覧ください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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